<今週のワイドショー通信簿>オウムの特別手配犯・平田信の出頭が「逃亡生活疲れ」からでないことは明らかだろう。17年間の逃亡の間にオウムの獄中幹部や残党との連絡はなかったのか、一連の殺人やサリン事件、警察庁長官狙撃にどこまで関わっていたのか、ロシアでの射撃訓練は何を目的としたものだったのかなど、解明されなければならない謎は多い。平田の出頭はその手がかりの1つになるはずだ。
ところが、平田と逃げ続けていた元信徒の斎藤明美が自首した途端、ワイドショーの興味は「男と女の愛の逃避行」のような様相になってしまった。「逃亡17年支えは命令?愛情?」(テレビ朝日系「モーニングバード」)、「オウム2人厳しかった逃亡生活」(フジテレビ系「とくダネ!」)、「だめんずに引っかかったかわいそうな女?」(TBS系「朝ズバッ!」)、「毎日カラコロ弁当かノリ弁『逃亡オウム2人』異様生活」(日本テレビ系「スッキリ!!」)という具合だ。コメンテーターたちの興味も、もっぱら2人の暮らしぶりに移ってしまった。
しかし、平田と斎藤の出頭・自首は周到に計画されたものだ。警察庁長官狙撃事件の時効成立を待ち、目黒公証役場事務長・仮谷清志さん拉致では「車を運転しただけ」と殺害への関わりを否定、麻原彰晃を非難することでオウムとの断絶=反省を主張する。しかし、自分が出頭することで麻原の死刑執行が先延ばしされることは承知しているはずである。
また、斎藤も平田の出頭後、外部との接触の痕跡を消すかのように身辺整理をした。捜査当局に任意提出した800万円の現金を「被害弁済にあててほしい」としているのも、裁判での情状を計算してのことだろう。平田が髪を染め、眉まで剃ってなぜ昨年中に警視庁・大崎署に出頭しようと焦ったのか。出頭するなら潜伏先近くの警察署でも良かったはずである。そこにもナゾがある。
平田も斎藤も、オウムがサリン製造・ばらまきなどの無差別殺人に走り出した時に教団内にいた「共犯者」だ。出頭や自首でさら葬り去ろうとしている闇は何なのか。あれこれ「憶測」交えて取り上げるのが、ワイドショーの役目ではないのか。(テレビウォッチ編集部)