「セシウムの かの阿武隈の白鳥か」「被曝の牛たち 水田に立ちて死を待つや」「列島沈みしか背ぐくまる 影富士」
これは「サンデー毎日」が取り上げている俳人・金子兜太(とうた)92歳が東日本大震災後に読んだ俳句である。
「富士山の影は晴れた日には白く、曇った日には黒く見えた。日本列島が沈んで、天下の霊峰が萎縮しているように見えたのです」
富士山が背筋を伸ばすまでにあと何年かかるのか。野田佳彦総理が原発の冷温停止宣言をしても、それを信じる人間はほとんどいない。文科省はいまだに放射線計測データを「改竄」して低く抑えて発表している。そのことでかえって福島県民の不安感を高めてしまっているのにである。
東京電力は原発事故を収束できたわけでもないのに、来春(2012年)からの料金値上げを発表した。メディアから原発事故や放射能の危険性についての記事が消えていった。年が改まれば原発のいくつかは再稼働され、放射線量年間20ミリシーベルトは安全という根拠のまったくない数字が一人歩きし、福島の子どもたちは忘れ去られるだろう。これが日本という国の現実である。
「談志師匠は凄い!マンセー叫んであの人も連れてった」
さて11月21日に落語立川流家元・立川談志師匠の「お別れの会」が東京のホテルニューオータニ「鶴の間」で開かれた。 会費として壱万円。入って左側に祭壇が作られ談志師匠の高座の写真が飾られている。「ありがとうございました」と一礼して献花。右側の大きなスペースは立食パーティ式で、飲み物、料理が並んでいる。
大きな2つの液晶ビジョンでは師匠在りし日のビデオが流され、司会は弟子の立川談笑。石原慎太郎東京都知事が弔辞。「あの世で会えるまで元気でいてくれ あばよ談志師匠」
山藤章二・立川流顧問、三遊亭円歌・落語協会最高顧問、桂歌丸落語芸術協会会長らが挨拶。鶴瓶がおもしろかった。
「師匠は高座でよくキムジョンイル、マンセー!といってたけど、ほんとに金正日を一緒に連れて行ってしまはったのはすごい」
ステージが作られ、師匠の好きだった「ザッツ・ア・プレンティー(これで満足)」をデキシーキングス+北村英次が演奏。師匠自ら「芸術の神が舞い降りた」と述懐した2007年12月の「芝浜」の後半部分のビデオ上映。最後に日野皓正のトランペットソロと毒蝮三太夫の音頭で三三七拍子と盛りだくさん。
ビートたけし、久米宏、爆笑問題、中村勘三郎など約1000人が和やかに師匠を送り、午後3時からは一般フアン3000人が献花した。笑いの中にもしみじみとした余韻の残るいい会だった。