リポーターの岸本哲也が混迷ギリシャを先週(2011年10月)、1週間かけて取材してきた。独・仏などEU諸国の懸命の支援の一方で、なぜかギリシャ国民は政府の緊縮財政策に反発し、建設的とは思えないデモばかりが目立つ。
首都アテネに入った岸本がまず見たものは、まだ昼さがりというのにオープンテラスで談笑しながら酒を飲み食事をする大勢のアテネ市民の姿。賃金カット、年金引き下げなどどこ吹く風といった具合だ。
「世界がギリシャを見捨てるわけがない」
そのアテネで出合ったのが土産物店で働く河田和美(61)。客が商品4個を手に持ってレジへ向かおうとすると、すぐさま「チョット、日本では4はラッキーナンバーじゃないから5つにして」。売り込み方も年季が入っている。ところが、そばにいる男性スタッフはにやにや傍観するだけ。
その男性スタッフに今後の生活に不安はないか聞くと、返ってきた答えが「世界がギリシャを見捨てるわけがないじゃないか。なんたってすべての文明はギリシャから始まったんだ。仕事なんてどこにでもある。そのときが来ればわれわれは奴隷のように働くさ」
このやり取りを聞いていた河田が、「(世界が)自分たちをほっとかない。ギリシャ人はそれが現にあるんですよ。ああ言えばこう言う。話が終わらないってわかります? 理屈だけ。本当にできるかって!」
ギリシャ人の家具職人の夫と日本で出会い、ギリシャに渡ったのが38年前。夫の2000ユーロの給料が今は半分に減った。住宅ローンがまだ14年間も残っているという。出張中の夫に電話で「娘の誕生日だったけど覚えていた?」。夫は予想通り「アッ、忘れた」。河田は「私に任せていればどうにかやるでしょうという感じ。無責任」と吐き捨てた。
古代遺跡で食べている国なのに落書きだらけ
司会の小倉智昭「古代遺跡で食べている国なのに、落書きだらけで。遺跡も。なにを考えているのかこの国の人は、と思わなかった?」
これに岸本は「文化を誇りに思っていて、非常にゆっくりのんびりしていておおらか。人生をめいっぱい楽しもうという姿勢ですね」
それで仏・独などEU諸国に迷惑をかけずに食べていければいいが、高い税金で四苦八苦し、さらに怠け者の国へ支援では堪ったものではない。