欧米の本場エンターテインメント業界に仲間入りしたいと、何人かのアイドルや歌手が全米デビューを果たしてきたが、どれも大成功したわけではない。あれだけ一生懸命マネしてきたのに、結果が伴わない形に終わることが多かった。そんな時に、思わぬ形で注目を集めたのがアニメやオタク文化、そしてそれに付随したアイドルだ。
日本オリジナルの文化で、ドメスティックなものの方が世界から注目を集めたことは、追いかけ続けてきた側からは想定外で拍子抜けするような事態だった。欧米のジャパンエキスポなどで、外国人のコスプレイヤーたちが熱狂しているのを見ると、ちょっとテレビではいじりたくもなってしまう。見た目のインパクトの強さが大好きなテレビにとって、彼らは好奇の対象であり以前は視聴率が取れる素材でもあった。
シンガポールでは国家政策
日本国内ではさほど万人受けしていない分野が、海外で人気を博してきたわけだが、最近は日本で受けるものが世界に通用する状態になっている。それがAKB48。CD売上枚数では圧倒的な強さを誇るが、テレビでは彼女たちが番組に出演したからといってとくに視聴率が上がるわけはもない。だが、フォーマットビジネスとして、いまAKBは世界から注目されているという。
昔から日本のアイドルがチヤホヤされた台湾はともかく、シンガポールではAKBのように、劇場から派生していくエンターテインメントのフォーマットを転用したいと国が本気で思っているらしい。そんなニュースをAKB48の生みの親・秋元康氏が出演している報道番組で先日取り上げていた。
このニュースを見て、先日NYでお会いした方の言葉を思い出した。彼女はブロードウェイでアジア人初のミュージカルスターとなり、現在は俳優育成やプロデューサー業として活躍している。その彼女が苦言を呈していたのが現在のアメリカのショービズ。
「アメリカンアイドルやジャスティン・ビーバーはダメ。パッと出てきて基礎が全くできていないから、長く業界には残れないわよ」
エンターテインメント業界のフロントラインで仕事をし続ける彼女の話を聞いた時は、身が引き締まったものだ。だが、これこそがエンターテインメントの形式が変わった証しなのではないだろうか。
対極にある韓流エンターテイメント
たしかにハリウッドスターは演技だけではなく、歌って踊れてアクションまでできる。日本でここまでできる人は少ない。しかし、そのアメリカですら、ファンと一緒にスターを生みだすシステムになってきているのだ。これはAKBにも通じるロジック。かつてのように、完璧なスターではなく、世間の流れとともに成長していくスターが今の時代には合っているのかもしれない。だからAKBは海外でも受け入れられる。
それに比べると、現在の韓国のアイドルたちは以前の日本のパターンなのかもしれない。彼ら彼女は歌に踊りにトークにと、すべてデビュー時には完璧にこなせるようになっている。それがファンが育てる日本のアイドルとは大きく違うので受け入れられているのだろう。いずれ韓国発からもAKBスタイルが来たら、それこそいの韓流旋風どころではなくなるかもしれない。
モジョっこ