地デジ化になると大騒ぎをしたあの日、各局が放送するだろうなぁと思っていた番組がありました。アナログ時代にさよならを告げるためにも、そしてなによりもテレビの黄金時代を視聴者に思い出させるためにも必要なかつての人気番組や長寿番組の名シーンなどを紹介する番組です。この手のものが各局こぞって放送されるのだろうと思っていました。ところが、そのような番組はチラチラで、数えるほど。それもどちらかというと、通常番組内に設けた特別コーナー扱いで、ちょこっと昔のニュース映像をいくつか放送する程度でした。
CDジャケット映すだけで100万円
さて、ここで問題です。なぜ過去の番組や映像を取り上げる番組は少ないのでしょう?。視聴率がとれない。こう言われてしまったらそれまでですが、もうひとつ答えがありそうです。お金です。1度流れたあの映像は誰が管理しているのか。ここからお金の不思議は始まります。オリンピックの映像はJOCが管理しているのか、それとも放送した各局の財産となるのか。ワールドカップどうか。名作といわれたドラマはテレビ局のものか、それとも制作した会社のものか。さらに、登場している芸能人やアスリートの所蔵権はどうなっているのか。こうなると、どれが誰のものなのか、さっぱりわからなくなってきてしまう。
こうして過去映像は肖像権や放送権などに莫大な金額がかかってしまうのです。わかりやすい例が、番組内で映像や写真ではなく、小さくタレントの顔をイラストで紹介するケース。最近増えたこの手もすべてお金がかからないようにするための工夫。宣材(宣伝用写真)を使ったら、いくら経費が飛んでいくかわかったもんじゃないからです。
私も番組を制作しているなかで、いくつかこの類の話を聞いたことがあります。ある番組で日本を代表するスーパーアイドルのCDジャケットを使うアイデアが会議で採用となったのですが、アイドルの事務所から出された使用許可金額にスタッフはビックリ。なんと顔写真を使用するだけで100万円! 当然このアイデアは却下。ちなみに、このアイドルは今も人気女優としてご活躍されてます。
1曲放送すると4000万円
でも、これはまだ序の口。スタッフがのけぞった数字がありました。事務所に依頼したのは、引退した国民的アイドルの名曲をフルサイズで歌っている映像の利用許諾。対して事務所から返ってきた答えが、こちら。
「1秒10万円なら放送してもいいですよ」
これでは最後まで歌を流すとざっと4000万円もかかってしまいます。歌手がマイクを握り歌い始めるまでのイントロ部分だけでざっと200万円ほど。番組全体予算を軽く越えるフルコーラス放送は当然見送りになりました。
なでしこJAPANでもこんな事がありました。世界一になった日の朝、ワイドショーではなでしこの映像を使っていましたが、その日以降のワイドショーでなでしこの映像を見たでしょうか。中継をしたフジテレビは放送権を持っているのでなでしこの映像は使えるのですが、テレビ朝日や日本テレビやTBSは…。そう、すべて静止画で放送していたはずです。これも権利。某大手広告代理店から、報道とスポーツ番組以外は秋口までなでしこの映像を使えないというお達しが出ているとか出ていないとか…。国民栄誉賞の授与の際、ワイドショーで彼女達の栄光のキックを映像として見ることができるのかどうか、今からちょっとした楽しみ。
モジョっこ