再び福島原発は爆発する―NY市大教授「極論」の説得力

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

   今週の「週刊現代」は合併号、「週刊文春」は総合週刊誌「7年連続1位」大感謝号で、「週刊新潮」が創刊2800号記念である。やはり新潮の2800号というのが燦然と輝く。初の出版社系週刊誌として1956年に創刊されて55年。「あの人はいま」というワイド特集を生み出し、合併号の売り物になった。

   今号も似たようなワイド特集「週刊新潮2800冊に煌めいた『巨星』堕ちた後の騒乱」をやっている。申し訳ないいい方になるが、人選も切り口も、かつての新潮らしさがないのが少し寂しい。取り上げているのは、歌手・青江三奈の臨終間際に結婚した作曲家と、青江の兄姉との遺産を巡る骨肉の争い。十三回忌を終えても、夫人の手元に保管されているジャイアント馬場の骨壺。晩年の川内康範が歌手・森進一に「おふくろさんを歌うな」と言いだして騒動になった顛末を、長男が初めて語っている。

   いまだに放浪の画家として人気のある山下清だが、あちこちで開かれている山下清展では、彼の贋作が展示され、売られているという、山下の甥の話。大乱世の男といわれた政治家・梶山静六が、20世紀の時点で原発の安全神話を危ぶんでいた。東北の政商・小針暦二の人脈を摩耗した長男の肉屋経営。100歳で日本共産党を除名された野坂参三元名誉議長などなど。

   新潮らしさは、先日、自民党を離党して菅内閣の総務政務官になった浜田和幸参議院議員に、中国人女性との偽装結婚の過去があるという巻頭特集。浜田本人もその事実を認めている。日本人男性と結婚するはずが、なかなか進まず、本国へ強制送還される可能性があった20代の女性を助けるよう頼まれ、困っているのを見ているうちに「憐憫の情が愛情に変わった」そうで、籍を入れていたの2、3年だと悪びれたところがない。

   確かに政治家として問題のある過去ではあろうが、この御仁、去年当選したばかりの新米参議院議員である。新潮が段平を振りかざして斬り込んでも、馬耳東風。意外に大物になのかもしれない。

談志師匠 高座ムリでもこの連載続けて欲しい

   「週刊ポスト」は、私には不思議な雑誌になってきているように思えてならない。今週も放射能関連の特集は見あたらない。左トップが「経済と暮らしを守る『投資』の時代」。右トップが「テレビ視聴率暴落 タブーな内幕」。柔らかネタは「私の『女性器』最新研究」。いつの時代でも投資をしようという人間はいるから、円高やPBR(株価純資産倍率)が1倍を切るパナソニックやシャープなどに注目しろというのはわかるが、テレビの視聴率が落ちているのは、単純に、どこを回しても金太郎飴のようなお笑い芸ノー人ばかりでつまらないからである。女性器研究はマンネリ気味だし、菅直人首相夫妻が「8月解散」の妄想に酔いしれているという記事も、切り口に新味がない。

   ポストは他誌のやらない方向を目指すあまり、方向性を見失っているのではないかと、密かに心配している。同じように最近の「週刊朝日」にも見るべき記事がほとんどないのも心配である。

   私は現代の立川談志の連載「いや、はや、ドーモ」を毎回楽しみにしている。時事放談とあるが、書いているのは昔の思い出話が多い。記憶力抜群の談志師匠だから、頭の中にある記憶だけで、昔の名人上手の高座や海外旅行のエピソードまで、軽妙洒脱な筆遣いで読ませてくれる。思い出話が多くなるのは、もともと新聞は読まないテレビは見ない人で、最近の政治や社会の動きにほとんど関心がないからだが、とくにここ1年ぐらい体調がよくないため、書けるときにまとめて書いておくからであろう。

   今週は師匠の親しい歯医者の話だが、筆の流れに乱れはない。だが、最近聞いたのだが、談志師匠の体調は相当深刻だという。もう1度高座に上がる姿を見ることは望み薄かもしれないそうだ。落語家としてはもちろん、全身で落語家という人生を生きてきた孤高の人である。その談志師匠の高座姿を見ることができないのはとても寂しい。せめて、この連載が続いてくれることを祈っている。

「いつかは正常に戻る」という根拠のない話

   同じ現代に、原発のこれからについての「極論」が載っている。東電の工程表通りに原発事故の収束などできないことが明らかになってきたが、それどころではない、再爆発があるかもしれないから備えろと、全米の著名な理論物理学者ミチオ・カク教授(ニューヨーク市立大学)がインタビューで話している。カク教授は、福島第一原発はいつ状態が悪化してもおかしくない時限爆弾で、彼が考える最悪のシナリオはこうなる。

「仮に巨大余震に襲われて敷地内のパイプやタンクが壊れたとしましょう。その時点で大量の高濃度汚染水が溢れ出し、放射能レベルは一気に上がる。作業員は全員避難せざるをえない。そこから原発事故は悪化の一途をたどるのです。原子炉内には水が絶えず注入されていないと、すぐ干上がってしまう。しかし、原子炉の破損がよりいっそうひどくなれば、壊れたカップに水を注ぐようなもので、いくら注いでも水はさっと流れ出す。そうなると炉心溶融が再開し、再び爆発が起こる」

   カク教授は福島第一原発が最悪の事態にまでいかなかったのは「奇跡」だったという。これからは、原発からの撤退を段階的にしていくのはもちろん、東海大地震の予想震源域に建つ浜岡原発は一刻も早く運転を永久停止するべきだとする。少なくとも、避難している福島の人たちがもと住んでいた家に帰れることはないとも語る。

「日本政府は『いつかは正常に戻る』という根拠のない話をしていますが、問題は福島に正常化などはないということです。本当のことを伝えなくてはいけない。さもなければ今後、現実を知らされたとき、人々はパニックに陥る」

   福島原発の事故は、収束までにおそらく50年から100年はかかるだろうと予測している。ならば、福島に住む人たちを、放射能汚染の少ない地域へ「疎開」させることを決断する時期は早ければ早いほどいいはずだ。こうして見ると、菅直人が首相の座にしがみつく永田町三文芝居は、放射能汚染の深刻な実態から国民の目を逸らせるための大芝居のような気もしてくるのだが。

オセロ中島しゃぶり続ける霊能師

   文春に奇妙な記事が載っている。「オセロ中島休業!を壊した井上陽水との『ドロ沼不倫』&ナゾの女霊能者」がそれだが、タイトルからして、どこに中心がある話しなのかわかりにくい。オセロという人気お笑いコンビの片割れ、美人の中島知子(39)がこの4月から体調不良で無期限休養したことは報じられている。それは悪質な女霊能者に引っ掛かってしまったからだというのだが、その前に中島が相当悩んでいた問題に、石川セリを妻に持つ歌手・井上陽水(62)との不倫関係があったそうだ。中島は結婚したかったようだが、この関係は2009年には終わったという。

   そこから霊能者が登場してくる。この霊能者、人にたかることが上手で、カモとみると高価な食事をおごらせ、贅沢な買い物や旅行に付き合わせ、挙げ句の果ては相手の家に住み着いて、生活すべての面倒をみさせるのだそうだ。中島も「神のお告げ」といわれたことを信じ、霊能者にのめり込んでいく。09年4月からこの霊能者と中島は家賃75万円の超高級マンションで同居を始め、翌5月にはこのマンションの向かいに中島の個人事務所が移転し(家賃42万円)、霊能者の母親と叔母とその長男が住み着いているという。

   霊能者の過去を洗うと、大分県の子ども時代を知る人からは、子どもの頃から霊能力があったなどという話はまったく出なかったそうだ。03年、霊能者の実家の土地の一部が差し押さえにあって競売にかけられたが、09年9月に霊能者の母親と叔母の次男が現金で買い戻している。

   なんのことはない、中島という売れっ子になった芸人が男に振られ、気弱になっているところを口のうまい霊能者の口車に乗せられ、金を貢ぎ、そのこともあって体調を壊して休業したことはわかる。この記事は、中島の不倫相手が井上だったことを暴く目的ではなさそうだ。いかがわしい霊能者にしゃぶられた中島が可愛そうだと言いたいのかもしれないが、霊能者は仮名だし、中島が恨んで訴えようとしているのでもなさそうである。霊能者を書くために、名前を出された井上は致し方ないが、ちょっぴり同情したくもなる。

吉本興業が釣り上げるお笑い芸人ギャラ相場

   中島の記事を読んで驚いたのは、この程度のお笑い芸人(失礼!)でも、すごい収入があるということだ。たしかに、トップクラスの落語家のギャラも高くなっていて、小さなホールでは呼べなくなって困っていると聞いた。立川志の輔、立川談春、春風亭昇太クラスなどは日立て100万円では無理だという。それには、吉本興業などが自社タレントのギャラをどんどんつり上げていることが影響していると、業界に詳しい友人から聞いた。かくして笑えないお笑い芸人がテレビを席巻し、視聴率は確実に下がっていく。

   私はテレビはニュースと競馬ぐらいしか見ないが、DVDは週に6、7本は見ている。先日見た「奇跡の海」(ラース・フォン・トリアー監督)は、スコットランドを舞台に、善良な女(エミリー・ワトソン)の生と死を描いた大河ドラマだが、映画が家で見られる幸せをつくづく感じた作品だった。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

姉妹サイト