なぜ測らない放射能α線とβ線―国と自治体指示は「γ線だけ」

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

正確なデータ公表すると住民パニック起こる!?

   今週は、週刊朝日が「あなたの街の放射能汚染 数値データ一挙公開」、AERAが「一目でわかる東京プラス関東6県 詳細データ付き 放射能ホットスポット」で、政府の出している数値は信用ならないと、詳細な放射能汚染地図を特集している。AERAによると、ICRP(国際放射線防護委員会)が定めている一般人の年間被曝線量の許容限度「1ミリシーベルト」は、自然放射線量とは別に人工的に浴びる線量もあるため、自然放射線量を合わせると、許容限度は計2・5ミリシーベルトになり、これを1時間あたりに換算すると0・285マイクロシーベルトが目安という。つまり、朝日が計測した葛飾区・水元公園入り口の草地表面の毎時0・618マイクロシーベルトは相当高い。

   週刊現代は「異常な量の放射線物質を検出 人口29万福島市内が危ない」と、原発から60キロ離れている福島市内の私立保育園「こどものいえ そらまめ」の正門付近で、毎時19・6マイクロシーベルトを計測したと報告している。しかし、国や県が毎日発表している福島市内の放射線量はさほど高くはない。どうしてこのようなことが起きるのか。こんな記事が6月16日付の「朝日新聞」朝刊に載っていた。

   「飯舘村役場前には、測定結果を表示する機械が設置されているが、村側は『県の結果との違いが大きく、村民を混乱させる』としていったん電源を切った。機械を開発し、提供したアルファ通信(本社・東京)によると、5月30日の放射線量は毎時約8・9マイクロシーベルト。これに対し、県が発表した付近の測定結果は3分の1以下の同2・8マイクロシーベルトだった。

   同社は対象となる放射線の種類を絞り、カウンターの高さを50センチから、県などが測る際の1メートルに上げた。その結果、毎時3・8マイクロシーベルトに下がったという。同社は『機器の感度の違いやちょっとした場所、高さなど測定方法の違いで結果は異なる』としている」

   故意なのかどうかわからないが、重要なことに言及することをこの記者は忘れている。それは「放射線の種類を絞り」という箇所である。放射線にはγ(ガンマー)線、α(アルファ)線、β(ベーター)線があるのは知られている。また、放射線量計測器にはGM管方式とシンチレーション方式がある。こうしたことに詳しい知人によると、いまのモニタリングポストで使われているのはシンチレーション方式が多く、これはγ線は感知するが、他はあまり感知できないという。国もγ線以外のものを除いて測るよう指示しているようである。

   朝日新聞の記事にある社の計測器は、どうやらGM計数管方式で、α線もβ線も感知してしまうため数値が高く出てしまったようだ。そのため、α線とβ線を感知させないように覆いをして、高さも50センチから1メートルに上げることによって、放射線量が村の発表のものと近い数値になったと思われる。多くのモニタリングポストに「これはγ線だけを計測しています」という但し書きが貼られていることも、あまり知られてはいない。国や自治体側は、α線とβ線を計測しないのは、γ線とちがって洋服やマスクを通さないからだと説明しているようだが、外に出て運動したり遊ぶ子どもたちの多くはマスクをしないし、手袋もしていない。αもβも体のなかに入れば、重大な影響を及ぼすはずである。住民にパニックを起こさせないためといういい逃れで、正確なデータを公表しない、または計測しない国のやり方に、一刻も早く「ノー」を突き付けなくてはいけない。そのギリギリのところにきているはずである。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

姉妹サイト