東日本大震災後、婚約する人が増えた。結婚指輪が売れている――。「絆が深まっているという話をたくさんお伝えしてきた」と笠井信輔アナ。しかし、じつはその正反対の現象も起きていると言う。「これからいろんなところで話題になるんじゃないか」と、笠井は先取り感を強調した。
浮き彫りになった「夫婦の価値のズレ」
それは「地震の対応をめぐって、夫婦の価値観の違いが出てきて、結局離婚に向かう」(岡林法律事務所)という「震災離婚」。東京にある同事務所では、震災以後、相談件数が2割増えた。仙台市の離婚相談所では、離婚相談が震災前の3倍になったという。
離婚相談に寄せられた事例からは、地震や原発事故が夫婦の絆を裂いている実態がうかがえるという。「非常事態」が、配偶者の「こんな人だったの!?」という部分を見せ、なにを優先するかという価値観の違いを際立たせる。
福島市に妻と小さな子供2人と暮らす20代後半の男性。放射能が心配で、自分は県外に移住したいが、妻は母親の介護を理由に福島を離れたくないという。避難したいのであれば、私とは縁がなかったと思い、子供を連れて出てってくれと、離婚を切り出されたという。
「苦労して入手したカップ麺」夫ひとりでペロリ
石巻市の20代後半女性は自宅が津波で浸水し、子供と一緒に避難した。不安な生活のなか、夫が自分の両親が心配だと実家に戻ったまま、いくら頼んでもまったく帰ってこない。自分たちより親のほうが大事なんだと愕然とし、今後夫婦としてやっていけるのか、自信がなくなった。
ある女性は食糧不足のなかで、5人家族の食料を買うために、一人スーパーで5時間並んで、やっとのことでカップ麺を4つだけ手に入れた。このカップ麺を大事に食べなければと思っていたら、用事で家を空けていた間に、夫がカップ麺ひとつを一人で平らげていたという。身勝手な夫の行動に、妻はぬぐいがたい不信感を抱いたという。
また東京でも、放射線の心配から避難したまま帰ってこない妻に対して、夫が「価値観の違い」から離婚を考えているとの相談があったという。