福島原発の深刻な事故をきっかけに、原発の「安全神話」を見直す機運が高まるなか、プルトニウムの安全啓発ビデオが動画サイトのYouTube(ユーチューブ)などで、注目を浴びている。
「頼れる仲間プルト君」と名付けられた動画では、「プルト君」なる2頭身の子供風アニメキャラクターが出演、プルトニウムの安全性をPRしている。通常の原子炉よりプルトニウムを多く使い、また多く産出する高速増殖炉「もんじゅ」を運営する動力炉・核燃料開発事業団(当時)が制作したもの(の一部)で、1990年代前半の発表当時、プルトニウムの危険を軽視しているとして問題視されたいわくつきの作品だ。
「ボクをのみ込んでも大丈夫。危険性は作り物のオバケ」
このビデオのなかで、プルト君は「ボクの危険性だけが強調され、脅しの手段に使われることがあるが、それはつくりもののオバケのようなモノ」「ボクについての正しい知識がないから、原子爆弾や放射能といった恐ろしいイメージが先に立っている」などと、「怖れの正体」を看破している。実際には、「飲み込んで胃や腸に入ってもほとんど排泄される(スッキリサッパリ)」ので、傷口から血液の中に入れたり、吸い込んだりしなければ「安全」(お墨付き)なんだそうだ。
さらに、プルトニウムは人間によって適切に安全に管理されており、「いったいボクは人間のすばらしい知恵でコントロールできないほど、危険なものなのでしょうか」と、反語法で人間賛歌を謳い上げている。
プルト君がビデオで直接安全性を言及しているのはプルトニウムや「もんじゅ」だが、原発や原子力エネルギー全般について、人間の英知があればまったく心配無用と言いたげだ。もし機会があれば自信満々にそう言っただろう。
人間の良き僕だったはずのプルト君はいま、福島原発の敷地内という、いてはいけない場所で微量見つかっている。ほかに、水の中やもっとほかのところにいるかもしれないが、人間にはプルト君の管理どころか、居場所すら容易に把握できない。いまプルト君はどんな思いでいるのか。「人間のすばらしい知恵」についての考え方に変わりはないだろうか。
ボンド柳生