アンドロイドはどこまで「人」になれるか―似れば似るほど不気味

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   しぐさや顔の表情などが人間そっくりのロボット「アンドロイド(人造人間)」の研究が急速に進んでいる。すでに、アンドロイドを使って大学で講義を行う実験や医療現場で看護師に代わって患者の痛みを癒す実験もおこなわれ、いまやアンドロイドを市販する段階まできている。

   「クローズアップ現代」はその第一人者といわれる大阪大大学院基礎工学研究科の石黒浩教授の研究をレポートした。

   スタジオのテーブルをはさんで、国谷裕子キャスターの前に座った男性。国谷が「こんばんわ」とあいさつすると、男性は頷きながら「こんばんわ」としゃべる。さらに、国谷が「スタジオの中は眩しすぎやしませんか」と聞くと、男性は瞬きしながら「いや、大丈夫です」と返した。

女優と演劇共演

   この男性アンドロイドを開発したのが「生きている天才100人」に選ばれた石黒教授。アンドロイドとの関わりは11年前にさかのぼる。ロボット開発に取り組む中で、機械的に動かすだけではなく、「人間らしい存在、人が共感できるようなロボットの開発」に挑戦したいというのが動機だった。

   以来、石黒教授は「人間らしさとは何か」と研究を重ねた結果、表情やしぐさが重要と考えた。そして、試行錯誤の結果、最初に造ったのが首や目、瞼が動く4歳の女児のアンドロイドだった。ところが、見た人からは「違和感を覚える」という意見が相次ぐ。人に似せれば親近感が湧くと考えていたのが大きな誤算だった。見かけが似れば似るほど動きの不自然さが際立ち、不気味に感じるようになるのだ。

   この現象を「不気味の谷」というそうだが、そこを乗り越えて親近感を持たせるアンドロイドを開発するには、徹底的に人間の動きを研究し再現しなければならない。石黒教授は自分をモデルに動作をビデオ撮影して、詳細に観察した。肩や手、足、顔の動き、とくに目に注目した。目は常に動いていて、座っている時もまったく止まっていることはない。

   こうした動きを機械でどう再現するか。ロボットメーカーと共同で自分のアンドロイドを開発したのが、冒頭でスタジオに登場した「石黒アンドロイド」だった。

   石黒アンドロイドには女友達もいる。昨年9月、名古屋市で開かれた「あいちトリエンナーレ2010」で、この女性アンドロイドと外人女優のブライアリー・ロングが共演し、人とアンドロイドが共に暮らす未来を描いた演劇が上演された。

   病のため死を目前にした女性を慰めるストーリーで、アンドロイドが詩を読み、別室にいる女優の声や顔の表情を画像認識システムを使ってアンドロイドに再現させた。

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