まずは、昨年暮れの腹立たしい出来事から書かせていただく。年末年始をニューヨークで過ごすために、12月21日朝(2010年)、ケネディ空港の入国審査を受けていた。
パスポートチェック、両手の指紋と顔写真撮影が終わってもパスポートを返してもらえず、ちょっとこいと別室へ連れて行かれた。部屋に入るとそこには40人ぐらいのアラブ人と思われる人たちが長椅子に座り、諦めきった表情をして、パスポートを返してもらうのを待っていた。
待たされている間、なぜ入国が止められたのか考えてみた。25年ほど前、北朝鮮からの招きで3週間一人で滞在したことか。4年前に友人のライターたちとアメリカを回り、反戦活動家たちと接触したことか。編集者時代の反米的言動か。しかし、3か月前、ハワイに1週間滞在したが、何にもなかったのに‥‥。心は千々に乱れる。
1時間ほど経って敬称略で呼ばれる。係官がパスポートを渡し、何もいわず手で出ていっていいという仕草をする。私の怒りに火がついた。その男の上司と思われる小錦のような黒人男性に、拙い英語でこういった。
「なぜ私のパスポートがチェックされたのか説明してくれ」
その男は意外な顔をした。これまでそのようなクレームをつける人間はいなかったようだ。無視しようとするので、さらに声を上げて「説明すべきだ」と食い下がった。
すると彼は「指紋がよく写っていなかったから調べていた」というのだ。「そんなことなら、その場で再撮影すれば済むことではないか」と私。そんな説明では納得いかないというと、男は目を剥いて私を睨みつけ、「それ以上文句をいうなら別室へ連れて行くぞ」と、いまにも飛びかからんばかり。
飛行機から降りて3時間以上が経っている。このままやり合えば、最悪のケースも考えられるかもしれない。勇気のない私は、彼を睨み返し、テーブルを叩いて、その場を離れたが、私にいま少しの勇気と英語力があれば、こう言ってやりたかった。
「9・11テロの犠牲者を哀悼する気持ちは深くもっているし、私もテロを憎む。だが、第二次大戦後、他国の戦争に介入し、多くの民間人を殺してきたことが、アメリカへの憎しみを生んでしまったことも事実である。一人のテロリストを入国させないために、人権を蹂躙するような身体検査をやり、アラブの人間と見れば疑いの目で見て、理由も明かさず、長時間留めてチェックするのがアメリカの正義なのか。多民族が共存する自由の国アメリカは、なぜこのような偏狭で怯えた国になってしまったのか」
菅内閣倒れ、小沢一郎は復権
話を週刊誌に戻そう。年が改まっても、相も変わらず菅対小沢の確執と熟年セックス特集が氾濫している。
「小沢VS.菅『不条理戦争』はこう結着!」(サンデー毎日)、「小沢一郎『孫子の兵法』」(週刊ポスト)、「菅、お前にできるのか『小沢生き埋め』」(週刊現代)、「小沢と菅『共倒れ』民主党滅亡」(週刊文春)。
ビジョンもリーダーシップもない菅首相は長くはもたない。小沢は起訴が決まれば一人で離党するのではないか。だが、このまま小沢が終わることはなく、復権してくるであろうというのが大方の見方のようだ。
サンデー毎日の座談会で、政治評論家の浅川博忠氏は昨年11月に鳩山前首相と話したとして、「脱・小鳩路線を強める菅政権に見切りをつけ、離党して鳩山新党を結成する可能性は十分あります。弟の邦夫氏(無所属)を巻き込んで『兄弟新党』になるのではないでしょうか」と言っているが、そうなったとしても、澱みきった政界に新風を巻き起こすことはできはしまい。亀井静香氏が民主党大会での挨拶で、党内抗争に明け暮れている惨状を「恥ずかしい」と言ったが、まさにそのとおりである。
女の子に不潔だと思われないため
さて、熟年セックス企画は留まるところを知らず、週刊朝日までが「20年間妻、不倫相手(73)との『交わり』を記録し続けた76歳元教師の『生と性』」を掲載し、読者から「熟年の愛の体験談」募集を始めた。
ポストはグラビアで、私たちの世代には懐かしい謝国権の『性生活の智恵』と奈良林祥の『HOW TO SEX』を特集している。元祖現代は、熟女・杉田かおると女医・宋美玄氏がセックスの悦びと不安について語り合っている。
若い連中は草食系でセックスレスが増えているといわれるが、団塊世代はよほどセックスが強いのか、それともこうしたものを読むことで満足しているのだろうか。この「ブーム」まだまだ続きそうである。
今週の注目記事。早ければ今年、ニューメキシコに宇宙へ行くための「宇宙港」が開港され、商業宇宙旅行が始まるかもしれないという朝日の「2011年宇宙の旅」。乗客は6人。宇宙空間を約4分間弾道飛行するだけで約1700万円かかるが、世界中から400人近くの申し込みがあるという。
文春の「香川 本田両エースはなぜ『下の毛』を剃っているのか」がおもしろい。サッカー日本代表の香川真司がテレビで「(こっちは=ドイツのこと・筆者注)やっぱり下の毛は剃るじゃないですか」と話したことで話題になり、文春が取材してみると、ヨーロッパでは剃ることが当たり前で、スポーツとは関係なく、エチケットとしてで、女の子に不潔だと思われないために、そうせざるを得ないのだそうだ。
その理由は、「向こうはシャワー文化で、日本みたいに湯船に浸かって汚れを全部落とすワケではないでしょ。だから陰毛は性病の感染源と思われてしまう」(あるスポーツライター)
もう一本は同じ文春。月刊『文藝春秋』1月号で近藤誠氏が書いた「抗がん剤は効かない」を、日米の最前線で活躍するがんの専門医二人が痛烈に批判している。中に、梨元勝さんが抗がん剤で治療中、急死した件が出てくる。がんを治療するための薬で、かえって死を早めてしまうことなどあってはならないことだ。この抗がん剤の議論、もっと深めてもらいたいものだ。
最後に、私もお付き合いさせていただいた横澤彪さんが亡くなられた。ご冥福をお祈りしたい。