2010年の流行語大賞が「ゲゲゲの~」だったのは象徴的でしたね。「ゲゲゲ」は妖怪の世界の話でしょ、この1年、テレビも妖怪の跳梁跋扈でしたもの。マツコ・デラックス、ミッツ・マングローブ、渡部陽一……、化け物だらけですよ。
その妖怪に完全に押し出されちゃったのがお笑い芸人たち。一生懸命笑わせようとしている人より、出てくるだけでOKという人たちの方がウケちゃうんだから、つらいですよ。でも、それはお笑いの方のレベルというか、力量が落ちているということでもあるんですがね……。
「M1」打ち切りさもありなん
打ち切りになった「M―1グランプリ」の12月26日の決勝戦を見ていても、これからちゃんとやっていけるのはいなかったですね。ネタが練れてないし、テンポも身のこなしもなっていない。しかも、審査員が先輩芸人たちというのでは、内輪ウケでしかないでしょう。M―1だけでなく、「爆笑レッドカーペット」「エンタの神様」が次々と終了しましたが、それだけお笑いが行き詰まっているということでしょう。
お笑いには、常に面白いネタを作り続けなければならないという宿命があってね、ちょっとでも「今日ウケたからこれでいいや」と思ったら飽きられてしまうの。そりゃあ厳しいですよ。ウケるネタを作り出すには大変な苦労と時間がかかるのに、ようやく「見つけた!」と思っても、その先へすぐ進まないと見る間に立ち枯れてしまうんですから。そんなネタを考えたり、それを自分の芸にしていくための経験を積んでいない芸人が多くなってしまっているんです。
でも、本物の芸人じゃなくても、いまはそこそこ仕事があるんです。テレビにはいくつものお笑い番組がありますからね。プロダクションや事務所は、まだ発展途上の人や素人みたいな人でも、番組に潜り込ませてしまえばいいわけで、次々と繰り出してくる。見ている方はお笑いの質の低下をたちまち感じますから、お笑い離れが起こって、同じ素人なら妖怪の方が面白いということになっちゃったんです。