体当たり中国船「スパイ船説」…日本の出方試す「仕掛け」の臭い

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緊張状態作りさらなる強硬手段

   転換期といえば、日中関係も大きな転機を迎えている。日本が領有を主張する尖閣諸島沖で、中国のトロール漁船が石垣海上保安部の巡視船に衝突した事件で、船長を逮捕したことから、中国側の反日気運が急速に高まっている。

   「週刊文春」は、日米の情報のプロたちが件の漁船は「スパイ船」ではないかと疑っているという。その理由は、漁船の大きさが、これまで出没していた漁船とはかなり違うからだ。「もしそうであれば、トロール漁船を仕切っていたのは船長ではない。船員に偽装した中国情報機関員か政治士官が存在するはずだ」(文春)

   そして、その後の中国政府の抗議の姿勢に、その疑いを濃くしたという。なぜなら、丹羽大使を呼びつけた国務委員は「人民解放軍の諜報機関『参謀部2部』と一体化した『裏外交』の最高責任者」として認定されている人物なのだ。中国側の目的についてはこう書いている。

「日米の情報のプロたちは、トロール漁船の事件が、中国政府による『作戦』の可能性が高いと判断している。つまり、ごく近い将来、尖閣諸島の実効支配の作戦を意志決定して、どこまでやれば日本はいかなる手段に訴えるか、その対抗措置を作成するために諜報機関が指揮した『仕掛け』ではなかったのか、そのため、突撃しても支障のない大型船を用意したのではないか」

   緊張状態を意図的に作り、さらなる強硬手段に中国は出てくると読む。

   私が行くはずだった10月中旬の日中友好団体旅行も、中国側の要請で中止になった。日本への中国人旅行者も激減しているようだ。

   新潮で、京都大学大学院の中西輝政教授はこう語っている。

「船長を国内法で裁くのは当然のことですが、そうなれば中国はガス田の掘削を始めるかもしれない。そこで、日本が対抗措置で試掘を始めれば中国は確実に軍艦を出してきます。対する日本も海上自衛隊の護衛艦を出動させなければならない。菅総理には、そうやって中国と対峙する覚悟があるのでしょうか」

   かつて旧ソ連のゴルバチョフ元書記長は「外交に敵も味方もいない。あるのは国家利益だけだ」と言ったという。

   私は、大国化・覇権主義化する中国に対抗するには、日米韓がまとまっていくしかないと思う。さて、考え方は文春・新潮に近いと思われる新任の前原外相が、どんな手を打つのか。ひとつ間違えば日中関係はさらに危ういことになりかねない。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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