週刊朝日「人が死ぬ前に後悔すること」…どうつけるか『人生の落とし前』

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   お盆休みは終わったが、週刊誌は夏枯れ状態が続いている。去年はのりピー事件で大騒ぎだったが、今年はヤクザが政治家になっただけで、何も政治家らしいことはやらなかったハマコーこと浜田幸一元議員が背任容疑で逮捕され、汚れっぱなしの晩節をまたまた汚しただけでは、ワイドの1本にしかなるまい。

   民主党の代表選挙で、菅直人首相が勝つか小沢一郎前幹事長が立候補するのか喧しいが、先日会った某元公明党委員長の話では、キーパースンは仙谷由人官房長官なのだそうだ。彼はニーチェを愛読するクールな元左翼。この際、徹底的に小沢と闘って、勝てば完全に小沢を日干しにするし、負けたらみんなで冷や飯を食えばいいと腹を括っているそうだ。小沢も舐めてかかると痛い目にあう、という読みだ。

長寿大国の幻想「この国では長生きは悪なのだ」

   さて、お盆だからでもあるまいが、100歳以上の年寄りたちが、日本全国で何百人も行方不明になっていることが、大きな話題になっている。

   とっくに死んでいるのを知りながら、娘や、といっても81歳だが、孫たちが年金を受け取り続けていた東京・足立区の111歳の男性の死が発見されたことから、役所があわてて確認しはじめたら、出てくる出てくる。

   上記のケースも、民生委員がこの家の家族と7か月にもわたって、本人に会わせろと言っていたのに、言を左右にして会わせず、最後は苦し紛れに「岐阜の施設に預けている」と言ったことから、怪しいと思った民生委員が区役所に話し、区役所の人間が何度も足を運んだ。それでも埒があかず、ようやく警察が乗り出し、家宅捜査してミイラ化した死体を発見したのだと、「週刊文春」が書いている。

   役所の怠慢もあるが、少し前なら、民生委員だけでなく、近所の人間が老人たちを見守り、その老人の情報は役所の福祉担当者も持ち、警察も共有していたのに、個人情報保護法という悪法のために、情報を共有できなくなってしまったことが発見を遅くしてしまった。アホな話だ。

   ここまで来ると、もはや親子の断絶とかのレベルではない。深沢七郎の「楢山節考」ならば、70歳になった母親を息子がおぶって泣きながら捨てに行くが、今では隣の部屋で死んでいても、ふらっと出て行って何十年も音信がなくても、探しもしない。その上、入金される年金は使っているのだから、盗人よりもたちが悪い。

   これでは、笹川良一でなくとも「お父さんお母さんを大切に」と小学校から教えなければいけないと思わざるをえない。

   「週刊新潮」によれば、警察関係者がこう言っている。

「ここ10年あまり、毎年1000体強の身元不明遺体が発見されます。時効に相当する記録保存期間が過ぎれば、その名の通り各地のお寺に無縁仏として葬られる。08年末時点で、身元不明遺体は約1万7000体にもなるんです……」

   長寿大国ニッポンは、アホな役人が実態を知らずにつくりあげた幻想だったわけだ。この国では、長生きすることは悪なのだ。いやはやである。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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