〈夏の恋は虹色に輝く(フジテレビ系月曜9時)〉なんだかんだ言っても伝統の「月9」だし、嵐の松本潤が初主演ということで、これは見とかないといけないなとチャンネルを合わせたのだけれど、相手役の竹内結子にウエートが置かれ過ぎていて、肝心の松本の影が薄い。1回目は『つかみ』だから、ここで主役のキャラクターをしっかり印象付けておかないとお客さんは付いて来てくれないのに……。その意味では前途多難ですなあ。
伊東四朗すぐ死なせちゃもったいない
大物俳優の息子で自分も俳優だが、芝居がへたくそでまったく売れないくせに一流気取りの松本が、ひょんなことで知り合った気が強くてしっかり者の竹内に恋をして、叱咤されながら大人になって、やがて役者としても評価を得て、周囲の反対などを乗り越えて2人は心を通わせていく。まあ、そんなお話なのでしょう。
ストーリーが1回目から読めてしまったとしても、そこは恋愛ドラマだからいいんです。ただ、気になる点がいくつかありましたね。一つ目は松本の父親で大物俳優役の伊東四朗がすぐ死んじゃうこと。伊東はドラマ全体に厚みをもたせる大事な役なのに、それをアッという間に殺してしまうのは、いかにももったいない。これでは存在感ある伊東四朗を起用した意味がありません。
もうひとつ失敗しているのは、冒頭の松本のナレーションです。竹内への思いを語らせるのだけれど、ナレーションはよほど上手に使わないと、ドラマを安っぽくしてしまうんです。心の内を演技で見せるのが芝居なのに、それを最初にしゃべって説明されては、このドラマを見続けようという興味を失ってしまいますよ。
そもそも、松本と竹内の呼吸が合っていない。松本が趣味のスカイダイビングの着地に失敗して、通りがかった竹内に助けられるという出会いは面白かったのに、一方的に思いを寄せる松本、そんな松本など眼中になく、自分の生活で手一杯の竹内……。当然、せりふのリズムや動きはまったく違うはずなのに、それぞれが相手に合わせているから、かえってチグハグな感じになってしまった。もっと、芝居以前のすり合わせみたいなものが必要じゃないですかね。
月9なので、みんな一定の水準以上のものを期待するからハードルが高いのはわかるけど、最近は前作のキムタク主演「月の恋人」も竜頭蛇尾だったように、予算をつぎ込み、役者を並べる割にはパッとしない。そろそろ月9も「伝統意識」を捨てたほうかもしれません。
だまされる つもりで見よう 恋の行く末