脳科学者の茂木健一郎が、2020年のオリンピック開催を目指している広島での体験を記している。
「広島にオリンピックは来ますかね?」
タクシー運転手に茂木はこう質問した。「さあ、熱心にやっているのは市長1人だからねえ」。素っ気ない。その理由を問うと、「招致に何十億ってかかるんでしょ。交通だって、大渋滞になりますよ」。
好意的な回答を予想していた茂木は、「なんだか現実という冷や水を飲まされた気持ちになった」とちょっと寂しそう。違う答えが欲しかったのか、茂木はもう一度、別のタクシーの中で運転手に質問したそう。「広島にオリンピックは来ますかね?」。
「私たちにとっては、遠い大きな夢ですからね。来てくれればいいなあ、と思いますよ」。今度は前向きな回答だった。茂木はお礼をしてタクシーを降り、ふと考えた。
前者の「冷静さ」と、後者の「夢」。比べようもない。どちらも「人間の心の真実」だ。夢がかなうのか、冷静さが勝つのか、それはまだ誰にも分からない。<テレビウォッチ>