<テレビウォッチ>GDPで間もなく日本を抜き、世界第2の経済大国となると見られる中国。リーマンショックなどで経済が世界的に軒並み落ち込むなかでも中国は例外的に案外堅調とあって、評価はますます鰻登り。軍事、外交面でも存在感はめざましい。米国と中国の「G2」時代なんて声も聞こえてくるほどらしい。
そんな国の外相が極東の外れの島国にお出でなすったというので、国谷裕子キャスターがインタビューに赴き、「『大国』 中国の外交戦略~楊潔チ外相に聞く~」と題したのが今回の放送だ。
大国でもあり発展途上国である
偶然にもつい先日、日本の「外相に聞く」的なインタビューがあったばかり。ふたつの映像、お話を並べてみれば、どっちが日の出の勢いの国なのかは明らかだ。楊潔チ(ようけつち)外相はとにかくよく喋りまくり、自信とプライドが背広からあふれ出しそうであった。質問とは直接関係なく、「中国経済は急成長を続け、アジア地域、世界経済を牽引する存在になってきている」というセリフが飛び出してくる。
一方、国谷キャスターが質問で踏み込んでいたのは、中国が外からは充分『大国』に見えるのに、自分ではまだまだ発展途上国だ(「G2」などとんでもない話だ、など)としている点であった。つまりは「大人」と「子供」の立場を都合良く使い分けて、国際社会における責任を果たしてないのではないか的なことを、もっと婉曲に聞いていた。こうしたことはバブル期のころの日本も問題にされた気がしないでもないが、近頃は幸か不幸か、米国以外からは、そううるさく言われなくなったようである。
外相のお答えは「大国であることと発展途上国であることは両方事実」。大人であり子供でもあるのだから、お前はどっちなんだなどと他人にとやかく言われたくない様子であった。
「発言の隅々から、アメリカによる一極主義を変え、多極化を進めようとする中国の外交戦略が色濃くにじみ出ていたように感じました」。番組の終わりに、格調高いお言葉でインタビューを振り返る国谷キャスター。
もっと下品に、タブロイドニュースサイトな感じで振り返ると、発言のそこかしこから、それこそ一時期の米国のような、大国の驕りの萌芽が出ていたような感じではあった。
ボンド柳生
*NHKクローズアップ現代(2009年11月24日放送)