<テレビウォッチ>この日からはじまった「シリーズ政権交代」。サブタイトルは「実現できるか『政治主導』」と付けられており、官僚と政治の関係がどう変わるか、あるいは民主党が本当に変えられるのかといったテーマである。
スタジオゲストでやってきたのは、民主党政調会長代理の福山哲郎。番組の公式サイトを見ると、今後のシリーズでも民主党の要人が続々と出演予定のようだ。今回を見た限りでは、番組のスタイルとしては、民主党政権の広報シリーズになりそうな気配がないでもない。
脱官僚の実現性
「これまでの自民と官僚の関係、なにが問題だったのか」。国谷裕子キャスターがそんな問いかけをすると、福山は選挙戦の名残を感じさせるようなしゃがれ声で滔々と弁じ立てた。
政治と官僚が一蓮托生になってのかばい合い、もたれ合い。政策の再評価やドラスティックな変更ができなくなってしまった――。それは、なぜ政権交代が必要かが説明してある解説書のようであった。おそらく何年も繰り返している話だから、すっかり手慣れた感じだ。
その一方で、脱・官僚、政治主導をいかに進めるかとなると、若干歯切れが悪いという印象だ。首相直属の国家戦略局を設置し、予算などの大枠を政治『主導』で決めるほか、省庁内に政治家を100人送りこむというが、具体的なことは「まだこれから」の部分が多い。
プライドの高い官僚を政治主導で「協力」させられるのか。それだけの資質が民主党議員にはあるのか。スタジオの国谷キャスターやNHK記者は、福山の言い分にそれほどガッテンした様子ではなかった。そんな雰囲気を意識してか、番組の最後になって福山は「国民の皆様にお願い」があると言う。「お願い」は選挙の際に、とくに終盤戦にはしゃがれ声のそれをさんざん聞いたが、まだ終わりではなかったのである。
「結果をあわてないでほしい」。福山曰く、アメリカの大統領も交代してから100日は「ハネムーン」の期間がある。「まずは予算編成で、民主党がどれだけ約束を守ってやろうとしているか、あたたかく、厳しく見守ってほしい」。
たしかに民主党政権はまだはじまってもいないし、ウン十年続いた政権からのチェンジにはそれなりに混乱もあるだろう、時間も必要だ。しばらくは「まだこれから」と見守る国民は多いだろう。しかし、それを政権自身から直々「お願い」されるというのも、少々おもしろくない気分ではあった。
ボンド柳生
*NHKクローズアップ現代(2009年9月1日放送)