「キムタク老いたり!」。文春と新潮が、5月23日から始まったキムタク主演の「MR.BRAIN」について特集している。草なぎ剛の逮捕や中居正広主演ドラマも大コケで、「SMAP」存続の危機が叫ばれている。そんな中、TBSが総力を挙げ、キムタク自らも番組宣伝のためにあちこち出まくって、何とか初回は24.8%の視聴率をとって、関係者一同ホッとしているようだが、新潮は「『キムタク』が異様な大宣伝で挑んだ『MR.BRAIN』の出来栄え」の中で、作家の麻生千晶さんに、「あれだけ自分の番組ばかり宣伝して、テレビ局は免許事業と言えるのかしら」といわせているが、切り口では文春のほうが何倍もおもしろい。
平成の高倉健に?
「キムタク『MR.BRAIN』は脳に悪いよ」で、ライターの今井舞氏は、キムタクを出して失敗は許されない、局、いや、テレビ業界挙げての鬼の形相がひしひしと伝わってくるとして、「そうやって必至にキムタクにしがみつけばしがみつくほど、テレビ界と見ている私たちの距離はどんどん開く。もう我々はキムタクに対して、そこまでありがたみを感じてない」とばっさり。「キムタク人気が下がった最大の理由は、彼が『老けた』せいだ。パサついて脂っ気のない髪。パンパンで分厚いのに水分のない、錦野旦みたいな肌。深いシワ。ふとした瞬間のアゴの肉のたるみ。完全に質感がもう『中年』だ。(中略)キムタクから皆の心が離れたのは、死んでも『若者枠』のカテゴリーから離れようとしない、その往生際の悪さのせいだ」(同)。
この後に続く言葉にしびれたね。
「歳を重ねたら、それなりにふさわしい役を演じればいいものを、あくまでも『若者』でいたがる見苦しさ。キレイでカッコいい若者役なら、もう本物がいくらでもいるというのに、同じ土俵でイケメン勝負。しかも八百長。そんな茶番、誰が見たいか」
先日、クリント・イーストウッド監督・主演の「グラン・トリノ」を見た。頑固な老いぼれを演じ、若くて凶暴なちんぴらたちに挑んで、見事な死に花を咲かせるイーストウッドに、高倉健の姿を重ねた。いくつになっても、若い頃の「昭和残侠伝」花田秀次郎のような役しかやらない健さんにこそ、こうした役をやってもらいたいものだ。
老境に入り、孤高を保っている男が、やむにやまれず、ドスをひっさげて敵方へ斬り込み、死んでいく。最後は観客が全員立ち上がり「唐獅子牡丹」の大合唱。
それでこそ、健さんも、彼の後ろ姿に熱狂した我々世代も、これからの老いさらばえていく人生を、思い残すことなく生きることができるのだ。
キムタクは平成の高倉健になろうとしているのだろうか?
どちらにしても、1つの事象を取り上げても、書き手の違いによって、これほどおもしろくなるという見本のような記事である。
いつもいっているように、雑誌は編集長の主観でつくる。誌面に、編集長の体臭が感じられない雑誌は読んでいておもしろくないが、このところの朝日がすごい! 編集長の怒りが1冊丸ごと出ているのだ。今週も、補正予算15兆円は「究極の無駄遣い」だ、日本郵政の西川善文社長が居座ろうとしているのは「クーデターか」、パフォーマンス男・舛添厚労相には「五つの大罪」がある、麻生・鳩山両党首こそ「世襲の権化」だと怒り、「編集後記」でも、定額給付金は景気回復に効果があったのかと怒る。朝日新聞も、これぐらい本気で怒ってくれれば、もっと紙面がおもしろくなるのにね。