公務員という言葉から、どういうイメージを連想するだろう。横並び意識・クビにならない・頑張りすぎない……仕事をするにあたって、熱血という言葉が似合わない。私はそんなイメージを持っている。今回のプロフェッショナルは、そんな私の意識をさくっと裏切った。今回のゲストは地域の再生のプロ、内閣府地域再生事業推進室企画官・木村俊昭。
木村は内閣府で働く役人だが、もとは小樽の地方公務員。地域を活性化するためにあらゆるアイデアを捻り、周りを巻き込み、実現していった。彼の仕事の流儀は「ばかもの」であること。溢れるほどの情熱と行動力をもち、最後まで突き進むヒトのことだという。
彼のばかものぶりを証明するエピソードがある。小樽で、世界の職人をあつめて技を競い合う場を作ろうと企画したときのこと。
「(競い合う場を)作りましょうと言った時に『ビル・ゲイツも職人の1人です。ぜひ来ていただきましょうよ』って言ったら周りはシーンとなって」
シーンとなるだろう。誰もが、まずそんな多忙な大物が小さな街に来てくれるはずがないと考える。茂木健一郎は、
「もう絶対に思いつかないですね、そんなこと。普通のコンピュータ関係の人の考える発想とは全く違いますね」
とコメント。考えたとしても恥ずかしくてだれも提案できないだろう。
しかし、ばかものであるということは、常識にとらわれた考え方をしないということなのだ。彼はビル・ゲイツにメッセージを託した大漁旗を送り、アプローチをした。結果、多忙のため本人は来られなかったが、マイクロソフトの副社長が訪問したという。
「出来るか・出来ないか」を考えるのではなく、したいことがあれば「どうしたらそれを実現できるのか」を考える。ジャンルを問わず、成功するかしないかはここにあるように思う。むかしは「ばかになる」とはどういう意味か分からなかったが、その意味が、最近なんとなく分かってきた。
慶応大学・がくちゃん
*NHKプロフェッショナル 仕事の流儀(2009年5月19日)