休憩とらず朝4時まで! 医者の情熱と体の不調

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   大動脈瘤は、いわば血管の爆弾だ。動脈硬化などが原因で血管が膨らみ、やがて圧力に耐えきれずに血管が破れる。大出血となり、9割はそのまま死に至るという。大動脈瘤を取り除く手術はあるが、やはり体力の面で高齢者には負担が大きい。

   その大動脈瘤を、切除せずに治す技術として注目を集めているのが、ステントグラフト。その手術のプロが今回のゲスト・大木隆生。東京慈恵会医科大学病院の教授でもある。

   ステントグラフトとは、正常な太さの人工血管にバネ状の金属を巻き付けたもの。大動脈瘤まで血管の中にワイヤーを通し、そこへステントグラフトを送り込む。そこで、ステントグラフを拡張させる。すると血液は人工血管の中を通るようになり、大動脈瘤へ血液が渡らなくなる。破裂の危険性は無くなり、瘤自体も次第に小さくなるという。

   他の病院で手術が難しいとされた高齢者が、大木を頼ってやってくる。週に1度の外来の診察は、午前4時くらいまで行われるという。来る者を拒まず、少しでも完治の可能性があれば、リスクを伝えた上で手術に応じる。他の病院で拒否された患者や家族の立場を考えれば、断れないのかもしれない。

   そこまで自分を酷使して、体は大丈夫なのか。大木は常に体に痛みを感じるのだという。定期的に、麻酔科医に痛み止めを打ってもらい、痛みをごまかす。医者の不養生とは本来は悪い意味だが、彼の場合に限っては意味合いが違うのだ。

「休憩をとるとその分終わる時間が遅くなりますし、空腹で集中力を高めると、そういうことをみつけました」

   半ば自虐的にそう語る大木だが、彼を見ていて本当に医者とは過酷な職業で、またその数も不足しているのだろうと痛切に感じる。特に特殊な分野においては。だれも過酷な思いはしたくない。だが大木は「世界一喜ばれる人になりたい」という理由でこの職に就いた。本当に、情熱で人は動くのだと思った。

慶応大学 がくちゃん

* NHKプロフェッショナル 仕事の流儀

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