<上から続く>本筋とはあまり関係のない、犯行声明文をワープロ打ちしたカオリという女性を探し出すが、記者同伴を島村が嫌がり、彼だけで会うが、彼女は沈黙。
在日アメリカ大使館職員にも会うが、島村に犯行を持ちかけたことや、銃器類を用意したことは否定。話に出てきた人間数人に会えただけである。それも黙っているか否定しているのだ。それなのに、島村の話に一貫性がありブレがないという理由で取材班は、「島村氏の証言は正しい」と確信するようになっていくのだ。
週刊誌全体の信用失墜軽んじている
取材班は編集長を何といって説得したのだろうか。物証はなく、状況証拠といえるほどのものもない。しかし、早川編集長は掲載に踏み切った。それを後押ししたのが、島村が実名で告白するといったからだというのだ。
確かに、金銭の要求もない、売名でもない、覚醒剤で頭がおかしいということもなさそうだ。だから、彼の証言を世に問う価値があると思ったのだというのだが、早川編集長は、何を世に問おうとしたのだろうか。私は全部読んだが、まったくわからなかった。
少しでも、島村の話に疑問を持っていたのなら、当時阪神支局にいて難を逃れた記者と対決させるというやり方もあったのではないか。私ならそうしただろう。
早川編集長は、この中で、朝日新聞などが批判したとき、訂正しなかった理由は、「島村証言の核心部分が間違っていない」と信じていたからだという。核心部分とは、島村と若い衆が銃を持って阪神支局へ侵入し、銃をぶっ放したと、島村がいっているだけで、それを裏付ける何ものもないのに。
金銭トラブルよりも、右翼からの相当な圧力があったのではないかと想像するが、連載終了後、島村が、他のメディアに、実行犯ではないのに、新潮に手記をでっち上げられたと、これまでの証言を翻した。それについて早川編集長は、「本人が手記の証言を覆す事態に至ったのだから、本誌は掲載した手記が誤報であったことを率直に認めざるを得ない」と記している。島村が黙り通してくれれば、誤報だと謝らなくてもよかったとでも思っているのか。この発言は、新潮の読者だけでなく、週刊誌全体に与えた計り知れない信用失墜を軽んじていると批判されても仕方ない。