福沢諭吉のお師匠さんが身近に! 秦の始皇帝末裔も出てきて…

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   <浪花の華~緒方洪庵 事件帳~>30分枠だけど、そんなに短いという感じはしない。CMがないから実際にドラマ部分が長いせいだけじゃない。中身が充実しているからだ。たまには2回にわたることもあるが、だいたいは1回でエピソードがちゃんと完結するようになっているのもよい。

   時代劇というと、江戸が舞台になっていることが多いが、これは大阪(当時は大坂)が舞台だ。江戸時代末期でも、まだ経済の中心は江戸より大坂だったのだから、もっと大坂を描いたドラマがあってもよさそうだが、意外に少ないのでは? ふと、橋下知事の無念さが分かるような……。

イケメンでないところが気に入った

   主人公は実在の人物、緒方洪庵で、修業中の青年時代の話。あの福沢諭吉も学んだ適塾を開いた名医、と名前だけは教科書で習ったっけ。その偉い人が一気に身近になる。

   後の洪庵・章(窪田正孝)は武家の出だが身体が弱く、武芸は見込みがない。おまけに人づきあいも苦手な勉強オタク。医者にでもなるほかなかろうと蘭学塾で修業の身。ヘタレだから、うれしくても悲しくてもすぐに泣く。窪田くんは童顔で、泣き顔だけ見ると子どもみたい。こう言っちゃなんだが、イケメンでないところが気に入った。

   これに配するに、腕も度胸もめっぽう強い謎の女・左近(栗山千明)。若衆姿で悪人をバッタバッタとやっつける。殺陣もサマになっていて、なかなかりりしい。普段は娘姿で饅頭屋の看板娘。顔のパーツが派手で顔からハミ出しそうに大きい栗山千明。娘姿はどうかなと思ったが、けっこうかわいい。

   じつはこの左近、大坂の町を1000年も守り続ける闇の組織「在天別流」の幹部で、秦の始皇帝の末裔……と急にスケールの大きい話に。それはともかく、金をめぐる両替商と大名の死闘などが描かれているのが興味深い。どちらかというと、ドラマではこういう場合、両替屋は悪役にされることが多いが、「在天別流」は大坂商人の味方、悪役は大名だ。

   薩摩藩が両替屋に借金を申し込み、断られる。貸しても踏み倒されるからだ。調達を命じられた藩士も命がけ、断られて切腹する。大名が貸せというのはとてつもない大金、踏み倒された両替屋は没落、なかには一家心中も出る。腹に据えかねた商家出身の塾生はゴロツキを雇って武士を痛めつける。商人の側からの目線が新鮮だ。

   第5回では、痘瘡(天然痘)の話が出てきた。医者としての章が、いよいよ種痘に取り組んでゆくようだ。福沢諭吉も適塾のことを書いていたが、塾生のバンカラぶりも面白い。しばし現実を離れ、日本に近代の芽が元気に成長し始めた頃に思いをはせるのも悪くない。

カモノ・ハシ

文   カモノ・ハシ
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