<ありふれた奇跡>『ありふれた奇跡』というタイトルはなんとも不思議な感じがする。めったに起こらない「奇跡」が「ありふれて」いる―――しかし脚本の山田太一に言わせれば、私達が生きていること自体がすでに「奇跡」なのだ。このドラマには、そんなありふれた奇跡の中で生きる登場人物達の日常が丁寧に描かれている。
業務用厨房機器販売会社に務める中城加奈(仲間由紀恵)と左官職人の田崎翔太(加瀬亮)は、たまたま居合わせた駅のホームで線路に飛び込もうとした藤本誠(陣内孝則)を間一髪のところで捕まえ、ホームに引き戻す。その時は駅で別れてしまったものの、再び偶然に出会った加奈と翔太は、ぎこちない会話の末メールのやりとりを始めるようになる。
第4話の今回は、加奈が翔太の家に行くシーンから始まる。ひょんなことから知り合いになった加奈と翔太は、ついに家に遊びに行くまでの仲に発展。翔太の祖父と父親も大歓迎だ。夕暮れの中、翔太の部屋でキスをする2人……しかし「恋愛が怖い」と言う加奈に、翔太も遠慮をする。
12年ぶりの連続ドラマとなった山田太一。
彼に「翔太は加瀬さんでなければ演じられないんじゃないかと感じた」と言わせたほど、翔太の役にピッタリの加瀬。自殺しようとした過去を持つ翔太のはかなさや頼りなさなどを、まるで「翔太本人」であるかのように上手く演じている。そしてドラマの華である加奈を演じる仲間も、さすがだ。仲間が演じるのは胸の奥に一つ秘めた傷を持っている以外、目立った特徴のないどこにでもいる「普通」の女性。「普通を演じる難しさを改めて痛感している」と語るほど役作りには苦労しているようだが、山田太一が描く中城加奈の雰囲気をうまく表現できているのではないか。
翔太と加奈の関係だけではなく、自殺をすんでのところで救出された誠と翔太・加奈の奇妙な関係や、翔太の父親と加奈の父親のナゾの関係など、これからの展開が気になる伏線があちらこちらに。ありふれた日常の中で繰り広げられる人と人との出会いと繋がりのドラマに、今後も目が離せません!
じょん