<テレビウォッチ>「バカですねぇ」と10分間に7回。橋下大阪府知事が、全国学力調査の結果公表をめぐって文科省が12月15日に出した「特定データの提供のしかた」にかみついた。「バカ、最悪、文科省の役人は入れ替わった方がいい」
例によってテレビは「バカ」のところばかりを流すが、何が「バカ」なのかを理解するのはちいとややこしい。
この学力テストは、2007年から小6と中3で国語と数学を全校で実施。その結果は、都道府県教委、市町村教委、学校に知らされている。が、内容は段階で異なり、都道府県教委には、当該都道府県の成績、市町村の成績、学校の成績。市町村には市町村と学校の成績。学校には、その学校と児童・生徒の個別成績が、それぞれ伝えられる。
しかし、都道府県教委の場合は、市町村と学校の成績公表は禁止。同様の縛りは市町村、学校にもかかっている。今回問題になったのは、文科省が「都道府県教委が公表禁止データはいらないという申し出があれば提供しない」と決めたこと。
橋下知事は、「府教委は自分たちの予算で市町村をサポートしようと一生懸命やっているのに、学力調査のデータをいらないというと思ってるのか。いやー感心しますよ、このバカさ加減には、ホントに」とやった。これでようやく分かったが、実はこれには前段があった。
大阪府は、このテストで全国平均を2年連続で下回ったため、橋下知事が8月、市町村教委の努力をうながそうと府教委に市町村の成績を公表するよう求めた。が、府教委は実施要項で禁止されていると拒否。知事は「このクソ教育委員会」と府教委を非難。
知事は結局市町村に直接呼びかけ、43市町村のうち35が成績を公表していた。しかし、これに対して教育現場からは、「学校間の競争を煽る」「ルール違反だ」と反対の声があがり、知事は、「責任は行政のトップがとるものだ」と突っぱねていた。
だから今回の文科省の決定についても、「もし府教委が、データを要らないなんて要請したら、予算一切つけませんよ」となる。これについて、塩谷文科相は、「何か勘違いしている。序列化するためのものではないことを分かってもらわないと。知事は、かつての経緯(競争になったこと)を知らないんじゃないか。やりたいんなら、府がやればいい」という。
加藤浩次は、「(データを)要らないという所なんてあるんですか?」と聞いた。
教育評論家の尾木直樹は、「要らないという所があるわけがない」
加藤は「ある程度の競争は必要だと思う。橋下知事のいうことはわかるんですが」
しかし尾木は、「60―64年にそれをやって壊滅的なダメージを負っている。競争対策がこうじると学力の向上にはならない。今でもそれをやってるところもあれば、大阪みたいに何にもしてないところがある」「だから、比較しても意味ないんです。イギリスは今年からやめた。その意味では文科相のいうことは当たっている」
加藤は、「じゃあ抜き打ちテストがいい? データ渡さないというのは文科省自身が調査を否定してるような……」
「その通り、全員やる必要はない。サンプル調査で十分なんです」と尾木。
加藤はなおも、「橋下さんのバカ、は正しいように思える」
尾木は、「その限りでは橋下さん正しいんだが、競争についてはちょっと違う」という。「競争を強いられると、先生はやらざるを得なくなる。人事で査定されますから」。
これはやはり一筋縄ではいかないようだ。ところで、ここらで一言あっていいはずのテリー伊藤。加藤が「きょうはテリーさんが腰を強打してお休みです」。どうりで今日は少し静かだった。