世界三大バレエのひとつとも言われる、ロシアのボリショイバレエ団。今回のプロフェッショナルはそのボリショイバレエ団で唯一の外国人バレエダンサー・岩田守弘。
数多くの役柄の中、岩田が得意とするのが主に悪魔や道化師などの個性的な役。キャラクターがたつ個性的な役柄。彼はいわゆる『名脇役』と呼ばれる存在なのかもしれない。
今やバレエ団のソリストとして活躍する岩田だが、当然はじめからすべて上手くいった訳ではなかった。
9歳からバレエを始め17歳のとき全日本バレエコンクールで優勝。その後、旧ソビエトへ赴く。順調にコンクールで実績を積み、あこがれのボリショイバレエ団に入団する。
まさにサクセスストーリーの典型のようにも思える。しかしなぜだろう。簡単に成功を手に入れられるわけではないようだ。
バレエ団の中で、誰も日本人のダンサーを認めてくれない。配役を決める芸術監督からも無視される。考えたくもない状況の中、チャンスが訪れる。バレエ団が威信をかけた作品「ファラオの娘」。岩田は役をくれるように直談判した。そして貰った役は"猿"。それはバレエの学生がやるような役だった。
だが彼は徹底的に野生の猿を研究し、猿を演じきった。それが岩田の評価を変えるきっかけになった。
「(あえて苦しさを求めるところは)ありますね、苦しければ苦しいほどいい。そうするとやっぱり磨かれてくるんじゃないですか。外からも中からも。でも僕が思うに、人間って調子がいい時っていい結果が出るけど成長してないと思うんですよね。悪いときに絶対成長している。いいことばかりだと心が遊んじゃう」
いい仕事をするためには遊びが必要、と言ったプロもいた。芸術的な仕事には心に余裕が必要なんだろうと僕も思う。しかしそれは鍛錬の中にあってのこと。試練と遊びのバランスこそが、プロになるために必要な感覚なのだろうか。
慶応大学 がくちゃん