<テレビウォッチ> 3年前、広島市で小1の女児(当時7歳)が殺害された事件の控訴審で広島高裁はきのう(12月9日)、「一審は審理を尽くしていない」として差し戻しの判決を出した。
女児の遺体が段ボールに入れられて見つかったこの事件は、近くに住むペルー人のトーレス・ヤギ被告(36)が強制わいせつ致死、死体遺棄で逮捕、起訴された。検察は死刑を求刑、被告は「悪魔がのりうつった」などと述べて無罪を主張したが、2006年7月広島地裁は無期懲役の判決。検察、弁護双方が控訴していた。
これに対して広島高裁は、「犯行現場を特定していない」「被告がペルーで起こした2件の幼女強姦が前歴とされていない」など、審理不十分とした。被告の室内にあった毛布に幼女の毛髪がついていたにもかかわらず、現場を「自室か周辺」とあいまいにした点などが指摘された。
一審は、裁判員制度の導入をにらんで、審理の迅速化をはかったモデル裁判で、公判前整理手続きを採用して、初公判から2カ月でのスピード判決だった。が、裁判員の負担の軽減に配慮するあまり、審理がおろそかになっては本末転倒。いわば戒めの判決になった。
テリー伊藤は、「被告は特異ですよね。悪魔がやったなんて。こうした微妙な事件を裁判員制度を想定してスピーディーにという矛盾が出た」
おおたわ史絵も、「被害者の身になってみると、スピーディーにしてほしい半面、本当に何があったのかも知りたい。難しいですよね」
江田けんじは、「モデルケースなの? にしても、基礎的な事実認定がずさんでは、判決の信用性を損なう」
被告は判決を不服として、最高裁に上告するが、おそらくは地裁からのやり直しになるはず。また「悪魔がやった」が出てくるわけだ。先の千葉・東金での幼女殺害事件も、知的に問題のある容疑者が逮捕されている。これも微妙な事件だ。
裁判員制度は5月から。実際にこういう事件に立ち向かうのは容易なことではない。