遺伝子組み換え(GM)と聞くと思わず身構える。これがいわば日本の常識だ。が、どうやらこのままでは済みそうにない。どう向き合うかを迫られているのだという。
福岡・朝倉市の菜種油メーカーはこの9月、オーストラリア南端の離れ島カンガルー島の農家25軒と菜種輸入の契約を結んだ。条件はGMを使わないこと。ここなら、本土からGMの種子が飛んでこない。ただし価格は1割ほど高くなった。
「いいところ、悪いところ両面ある」
同社は昭和30年代(1955年~)から30年にわたってカナダから菜種を輸入していた。ところが1996年、アメリカでトウモロコシにGMが認められ、カナダもこれに追随したため、輸入先をオーストラリアに変えた。年間7000トン。
同社の売りは「GMを使わない菜種油」で、これが支持されて、昨2007年の売り上げは11億円だった。そのオーストラリアが昨年11月、2つの州でGMを認めてしまった。うち続く干ばつ対策だった。カンガルー島は、いわば最後の選択だ。しかし、平田繁実社長も、「いつまで続けられるか」という。
いまGMを認めているのは23か国。ほとんどが日本への輸出国だ。大豆、トウモロコシ、菜種……出荷では、GM作物と非GMとの分別はない。環境保護団体がメーカー116社に行ったアンケートで、「GM作物の混入を否定できない」25社、「使っている」15社だった。これが日本の現状である。
岩永勝・作物研究所所長も、「すでに食卓にはのぼっている」と認める。食品には「5%以上混入は表示」義務があるが、家畜の飼料用には制限なしだ。岩永所長はむしろ、「GMにはいいところ、悪いところ両面ある。客観的にみる必要がある」という。