<テレビウォッチ>NHKスペシャル「よみがえる浮世絵の日本」。アメリカのボストン美術館に保存されていた浮世絵コレクションが、日本の研究者もびっくりする程の内容だったことを取り上げた。
1920年代初頭に竣工した帝国ホテルの設計者として知られるフランク・ロイド・ライトがスポルディング兄弟という資産家に依頼されて浮世絵を集めた。そのスポルディング兄弟がボストン美術館へ6500枚を寄贈したんだけど、展示を禁止するという条件をつけていた。
展示しなかったからこそなのだろう、絵の色は素晴らしく鮮やかなまま保存されていた。我々がこれまで見たことのある浮世絵は、変色してしまったものを見てたんだね。まるで別物だ、と研究者も興奮していた。展示できないのは残念だけど、デジタル画像で保存していたので、今後もこのデジタル画像の方は見る機会があるかもしれない。青なら青が見事なまでに鮮明で、一見の価値はある。こうした古きよき江戸の文化が日本ではなくアメリカに眠っていたというのは不思議な感じがする。
鈴木春信や東海道五十三次の広重、北斎といった有名どころの作品だけでなく、歌川国正という「幻の絵師」のものも多数見つかった。歌舞伎役者絵などで才能を知られていたが、これまでは残っている作品が少なかった。
コレクションのお陰で、江戸の絵師たちのすごい才能が、これまで以上に秀でているものだと分かった。とにかく本物の色使いは素晴らしかった。
また、広重の雨のシーンの描き方などは絶品だと改めて思った。面白かったのは、同じ絵師でも色調が変わる時期や、制作を休んでいる期間があることだ。彼らは版元から注文を受けて仕事をしていたが、どうも意に沿わない依頼もあったようで、その際休んだり不本意な作品を作ったりしたようだ。嫌気がさしたんだろう。広重の日本橋を描いたものも、数人のものと、人が多くてぐちゃぐちゃいるものと2種類あった。人が多いのが版元注文らしい。何となく広重の不満が分かるような気がした。
ナレーションの坂東三津五郎も雰囲気が合っていた。江戸のすごさを満喫できる番組だった。
ボストンで ひっそり眠る 江戸の華