「安易なオムツ」が人間性奪う?

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   当夜のクローズアップ現代、テーマは「オムツ」。200万人の高齢者がオムツをしている現状に対して、「必要ですか?その『おむつ』~広がる排せつケア~」と番組は問題を提起した。

うまく使えばQOL上げられる

   「オムツは悪いモノじゃないんですよ。うまく使えばQOLを上げられる」とゲストで排泄ケアの専門家である本間之夫・東京大学医学部泌尿器科教授。「行動範囲が広くなったり、外出しやすくなったりということですね」と国谷裕子キャスターはいつものように抜かりなく、ゲストの専門カタカナ語をさりげなく補足する。

   オムツの問題、それは「安易なオムツ依存」である。本人の排泄能力の正確な見極めもなされないまま、臭いものにフタとばかりにオムツをされてしまう。本人にも周囲にも安心で安全なのだが、そのうちオムツによって人間性が奪われてしまう。尿意を感じなくなり、いつのまにか、知らない間に排尿してしまう。高齢者の生活意欲を損なったり、認知症を誘発したりする懸念もあるのだという。

   こうしたオムツ依存を見直そうと、泌尿器科医の監督の下で排尿を訓練するような取り組みがあり、オムツが取れたり、薄い(違和感の少ない)タイプにできたりなど、効果を上げているという。しかし、今のところ大きな広がりを見せるには至ってない。制度・仕組みや人の意識が「排泄」を軽視していると本間教授は指摘する。

   介護認定では、運動や認知能力について詳しく調べるが、排泄については簡単にしか調べない。オムツをつけると介護報酬が上がるが、努力の甲斐あってオムツが取れると、その分の手間がかからないとして、報酬が下がってしまう。患者側には「歳だから仕方がない」というあきらめがあり、医師は排泄の問題を低く見る傾向がある。

   冗談じゃない、と言いたげな様子で本間教授はこう締めくくった。「排泄は社会性の根本、基本的人権なんですよ」

ボンド柳生

NHKクローズアップ現代(2008年9月9日放送)

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