<テレビウォッチ>鳥越俊太郎がいう。「なんでいま、指導なの? というのが多くて、谷亮子もそれで敗退したんだけど、そんなもんかいと思っていたら、内股でバーンと決まるとねぇ」
まったくだ。これが柔道かよ、と思うような試合ばかり見せられてた目には、実にすっきり、爽やか。アテネにつづいて金メダルをとった柔道63キロ級の谷本歩実は、すべて一本勝ちで北京を制した。「ここまでこれたのは、みなさんのおかげ」
一本柔道の師、古賀稔彦も、「よかった。アテネ以後、けがもあり研究もされて調子が上がらない。そこを何とか代表になれて、みんなに支えられた勝利」という。事実、アテネ以後優勝はなかった。実績を買われて代表になったときも、本人は「優勝もしていないのに申し訳ない」といっていた。
今回は、準決勝まではすべて寝技の押さえ込みだったが、そういえば、アテネの決勝も寝技の一本だった。立ってよし、寝て良し、という選手は少ない。そして、立ち技はいま、ポイントかせぎが主の格闘技さながらの荒っぽいものになっている。
同じ階級に妹の育実がいて、練習していても真剣勝負なのでだんだんけんかになっていくのだそうだが、今回はその妹が背中を押してくれたという。
北京のスタジオに姿をみせた谷本選手も、「妹さんに怒られたそうですね」という小木逸平の質問に、ケラケラと笑って、「アテネのあと沈滞している時に、妹に『そんなだったら、道場から出ていって』といわれて目が覚めた。妹の存在がいちばん力になった」
鳥越が、「あの内股は?」「なんで投げたのか気がつかなかったです」
一本勝ちへのこだわりに質問が集中した。「完璧な勝ち方ですね。練習でやらないと試合では出ない」
赤江珠緒が、「女三四郎といわれてますが、そう呼んでもいいですか」
「はい、ありがとうございます」と谷本。日本中が元気をもらった笑顔だった。