20年前と20年後のアルプス氷河 そのあまりの違い

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   <ニュース通信簿>アルプスというから、夏を呼ぶさわやかニュースかと思ったら、地球温暖化の話だった。

   スイス・アルプス最大のアレッチ氷河を望む、標高3000メートルの頂から、味田村太郎記者が伝える。「スイスの気温は30年で1度上昇していて、アレッチ氷河は昨年1年で30メートル後退しました」

   古い写真と較べると、たしかに氷河の高さも落ちていて、両岸の岩盤についた痕跡でそれとわかる。その高さは100年前と較べて100メートルになるという。

「2050年までにほとんどが溶ける」

   驚いたのは、氷河の脇150メートルの崖の上にある山小屋だ。もともとは150年前、氷河の際に建てられたのだった。氷河がどんどん低くなるため、岩盤に金属製の階段を作らざるを得ず、しかも年々継ぎ足されて、いまでは1700段にもなっている。

   歴30年という山岳ガイドは、気温が上がって冬の降雪が少なくなっているという。「去年で氷河は1メートル薄くなった。後退の速度が増せば、さらに問題になる」

   氷河の後退を少しでも遅らせようと、夏の間シートで氷河を覆っているスキー場があった。ゲレンデとリフト乗り場の間に段差ができてしまったのだという。スキー場経営者の「観光産業が廃れたら、この地域は生き残れない」という声は切実だった。

   アルプスではまた、永久凍土が溶けたために、土砂崩れや土石流が起こるようにもなった。年間40万人が利用するというロープウェーの支柱の一本が傾いた例があった。これも永久凍土の影響だという。コンクリートの土台に大きな亀裂が入っていた。

   味田村記者は、「2050年までにはほとんどの氷河が溶けてしまい、一部は消滅するという予測もある。またこのままだと、20年後には約40%のスキー場が閉鎖に追い込まれるともいわれる」という。これは観光業にとっては、たしかに死活問題だろう。

   だが、観光立国はスイスだけではない。アルプスの現状は、フランス、イタリア、オーストリアの将来にも関わる。異常気象による自然災害の多発もある。もうかつてのアルプスは戻ってこないのかと、多くの人が懸念しているのではないだろうか。

   雪と氷こそは山々がまとう最高の衣装だ。実は、スイス・フランスのアルプスで20年前に撮った写真を、ネットのアルバムに載せている。すると、「もうこんなに氷河は残ってない」という書き込みがあった。それが、4、5年前だった。

   アルプスはさらに寂しい姿になっているらしい。少し悲しくなる特集だった。

ヤンヤン

   *NHKニュースウォッチ9(2008年8月6日放送)

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