40歳前後を指す「アラフォー」という言葉を、このドラマが一層広めたようだ。わりと視聴率はよかったのね。
なぜ、30歳でも50歳でもなく、40歳か。それはズバリ、女の出産適齢期上限に近いからだ。つまり女にとって最後の決断を迫られる時期、というわけ。そういう意味ではけっこう重いテーマだ。コメディとしてサラリとすませるのは空々しく、リアルでは苦しすぎる。まあ、天海祐希を主役にもってきたところで、ある方向性が示されていたとは言えるけど。で、どういうところに着地させるのか興味があって、最終回まで追ってみた。
登場するのは主役の精神科医、聡子39歳(天海祐希)と友人の主婦、瑞恵39歳(松下由樹)、ファッション誌編集者、奈央35歳(大塚寧々)。多くの女から見れば聡子はエリートだし、大手出版社の社員奈央は自他共に認める勝ち組だ。ある友だちは「共感を感じたのは主婦の瑞恵だけ」と言っていた。
しかし、私はむしろ、ここには登場しないタイプが多数派なのではないかと思った。それはエリートでもなければ、いわゆる専業の「平凡な主婦」でもない。独身で、上昇の見込みもないまま、精一杯できることをして働き、自身を支えている人たち、あるいは主婦であっても家計を支えるためパートや派遣で働いている人たちだ。
聡子は結婚に対する焦りを感じてないという設定だが、ちょっとこれは不自然か。「美人で優秀だという若い頃の評価に安住して、女の価値が年と共に下がっているのに気がつかないんじゃない?」と友人たちは辛らつ。思わず、そのズレをウリにしている女医タレント、西川史子を思い出してしまった。でも、そう言われて聡子が結婚紹介所に登録してしまうところには共感。これは等身大だ。意外と思われるようなエリート女性が登録した例を知ってるからね。
ともあれ40歳近くなれば、どういう形にしろ、あるポジションには収まっている。努力して手に入れたポジションが高いほど、今さらそれを投げうつことはできないのは当然。自分の人生を相手に合わせて変える気がなければ、相手は限られてくるし、出会いのチャンスも少なくなってくる。ついでながら、これからは男も同じだと思うよ。
「有名人の夫もキャリアも持っている理想のライフスタイル」を武器に女性誌編集長を狙うため、人気のライフスタイル・プロデューサー(って何だ?)新庄(丸山智己)と結婚する奈央。わからなくはないが、一般的にはイヤなヤツだろう。編集長となった雑誌を売るために不妊治療の手記まで発表されるのでは、夫としては快くないのも仕方ないか。ン?某国会議員の顔が浮かぶ? この夫役、丸山智己の無表情がちょっとカッコよかった。
でも、そんな奈央を愛し、いつも見守り続ける小さなレストランのオーナーシェフ、まーくん(筒井道隆)。離婚して産んだ新庄の子を一緒に子育てしてくれるなんて、調子良すぎるぞ。うらやましいぞ。
で、肝心の聡子は、年下の臨床心理士、岡村(藤木直人)の求婚をいったん断り、院長として病院再建の道へ。でも1年後には再建成ったのか、北海道の児童施設で働く岡村を訪ね、幸せな再会。これも調子良すぎるぞ。うらやましいぞ。
主婦の立場に不満だった瑞恵は、仕事の苦労を経験し、リストラされた夫の気持ちも理解できるようになる。夫を励まし、共働きでやり直す。これもハッピーだが、特にうらやましくはない。
※Around 40 TBS系 金曜 夜10時~