だれでも覚えがあろう。子どもの描いた落書きは始末に困るもの。しかし、発育の過程を示すかけがえのない記録でもある。捨てるに捨てられないーー
これに、とんでもない助っ人が現れた。なんと、コンピューターでアレンジして、落書きを立派なアートに仕上げるアーティストたちだ。それを額に入れて飾れるようにする。
取材に協力してくれたお母さん(35)の弁はーー
「3歳の息子が、いっぱいおじいちゃん、おばあちゃんの絵を描いていたので、プレゼントになればいいかなと思って」
スケッチブックに描いた“原画”を渡して3週間。届いた小包を開くと、アーララ、線ばかりだった落書きに色がついて、巧みにレイアウトされた作品になっていた。コンピューター処理だから元のクレヨンのタッチもちゃんと残っている。じいちゃんもばあちゃんも本人も大喜びだ。
ビデオが終わると、スタジオじゅうがニコニコしている。このアイデアに「座布団3枚」てな雰囲気。「リトルアーティスト」というデザイナーのグループだという。スタジオにも、3枚の例が持ち込まれた。
原画を脇に置いて、「ゾウの絵」「兄弟の絵2つを合わせたもの」と、順に完成品を見せていく。色付けとコンポジションの妙に「オー」とこえがあがる。そして最後になるところで、小木逸平が「ドキドキして」という。
実は小木の3歳になる娘が見学に訪れたときに描いたものだという。タイトルは「テレビ朝日」。原画は人の顔やら何やらが一面に散らばったような絵柄だったが、パッと布をめくると、線が整理されて、青やピンクの色がちりばめられていた。「オーッ」
小木の「なんか、カラフルなミジンコたちというか‥‥」に大笑い。
これがLサイズで3万9800円、Sサイズは2万9800円で、製作に3週間かかるという説明に現実にもどった。うまい商売でもある。
でも、ちょっと心配になった。子どもたちの落書きは毎日のことだ。今度は家中がアートの額縁だらけに成らなければいいが‥‥。