こんな面白い会見というのは、滅多にない。牛肉などの偽装表示で矢面に立たされている「船場吉兆」がきのう(12月10日)行った謝罪会見は、この会社の実態をテレビの前で見事にさらけ出してしまった。
そもそもは、「従業員がやった」「仕入れ先が」といっていたのを、この日はじめて取締役の責任を認めたはずだったのだが‥‥記者の質問にいいよどむ湯木喜久郎取締役(45)らに、脇に座った母親で女将の佐知子取締役(70)が、ささやく声がマイクに筒抜け。
——従業員の独断はあったのか?
ここは母がきっぱり「ございません」
——なぜ食い違ったのか?
「‥‥」(頭が真っ白で‥)(頭が真っ白になってて)「初めての会見で頭が真っ白といいましょうか‥‥」(責任逃れの発言を‥‥)「責任逃れの‥‥」
——九州の牛肉を但馬牛だとした‥‥
「あの‥‥」(大きい声で)(目を見て!)「法令遵守が甘かった」
——消費者を欺くことになると認識していたのか?
(そらしてへんわ)「‥‥」(知らへんわ)(ほら、しっかり言わんか)
——お客を欺くという意識は?
(なかったと)(ないよ)「結果的に欺くことになって‥‥」
——その時点でその意識はあったのか?
(ない、ない)「‥‥申しわけございません」(はい、ないです)「思いが至らなくて‥‥」(結果的に‥‥)「結果的に欺いたと‥‥」
といった具合。うつむいたままの息子と違い、母は何を聞かれても即答する。
唯一、取り乱したのが、「父に対して申し訳ない」といったとき。「おまえは何ということをしたんやと、叱られると‥‥」と涙を流した。しかし、退任はしないという。
父は吉兆の創業者、故湯木貞一氏。1930年に開いた割烹「吉兆」を一代で和食の頂点にまで育て上げたひとだ。1男4女には別々の吉兆をもたせ、佐和子氏は三女。貞一氏が生きていれば、烈火のごとく怒ったことだろう。他の吉兆からの批判も強い。
赤江珠緒が「腹話術みたいですね」といった。
森永卓郎も「ママが実質的な権力者で、それが取締役に残るということは、なんの反省もないということ」という。
大沢孝征は「再生するには、あの女将しかないでしょう。あのていたらくで、他の人がちゃんとできると思いますか? ことの真相がみんなわかってしまって、なんのための会見だったのか」とまでいう。
赤江は「父に申しわけないというのは、ちょっと違う」と。
まったくだ。にしても、女将の迫力はすごかったね。