やたら可笑しい。ハチャメチャ、シンプソン一家。1987年から始まったアメリカのTVアニメで、日本で言えばポケモン以上の人気がある。WOWOWでも92年から放映して、こちらもすっかりファンが定着した。本作はその映画化だ。20世紀FOXが日本語版吹き替えを所ジョージや和田アキ子にやらせたら、ファンが怒って立ち上がり、主人公のホーマーはTV版の大平透でなければならない、と2000人の署名を集め反対運動を起こしていると言う。
(ccThe Simpsons TM & (c)2007 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
映画の冒頭、ホーマーが観客に「お前らアホか!」(GIANT SUCKER!)と呼びかける。「家のTV見てりゃタダなのに、わざわざ金を払って来るかよ」と。こんなかなり失礼で痛烈で不遜なギャグが全編を通して連発される。馬鹿にされても観客は大笑いで受けている。
アメリカの架空の田舎町スプリングフィールドが舞台。シンプソン一家の親父ホーマー(D・カステラネッタ/所ジョージ)は息子バートに「裸でスケボーに乗ってバーガーショップへ行け」なんて無茶な命令をするからバートはとんでもない目に会う。一家の優等生の長女リサは環境保護運動に一生懸命。お爺ちゃんは何やらフニャフニャと予言をするが誰も分からない。ホーマーは突如豚を飼い始める。そしてその豚の処理でホーマーは町にとんでもない災害を齎すことになる。町民はシンプソン一家に怒り狂い、追い詰める。赤ん坊を使ってアラスカ脱出計画など真剣に実行するのも可笑しい。ともかくハチャメチャ家族だ。
大統領になったシュワルツェネッガーがオーストリア訛りのヘンテコ英語で町を隔離する命令など、ストーリーは荒唐無稽だが、数々のギャグが笑える。やはりTVを見るより映画の方が断然面白い。最後に国歌ならぬ町歌を全員で合唱するが、メロディーはフランス国歌だ。脚本のマット・グレーニングはこの漫画の創作者。彼の父と息子はホーマーという。監督のデヴィッド・シルヴァーマンはTV版立ち上げのメンバー。スタッフ・キャストとも長年「ザ・シンプソンズ」に拘わって来た人たちだから、ストーリーも絵も編集も音楽もメンバーの気心が知れてこなれている。
2007年、アメリカ映画、20世紀フォックス配給、1時間26分、12月15日公開
監督:デヴィッド・シルヴァーマン
声の出演:ダン・カステラネッタ(所ジョージ)/ジュリー・カヴナー(和田アキ子)/ナンシー・カートライト(田村淳)
公式サイト:http://movies.foxjapan.com/simpsons