例え今が五体満足でも、いつまでも健康でいられるとは限らない。病気で、あるいは事故でいつ不自由を強いられるかは分からない。その時にお世話になるであろうものが、体の痛みを和らげるための「装具」や、足や手の代わりとなる「義足・義手」と呼ばれる器具。今回のプロフェッショナルはそれらの器具を作るプロ・佐喜眞(さきま)保。
私はまだ幸いにも装具などを身につけたことはない。それがどういう物なのかもよく知らない。たまに装着している人を見かけることはあるが、それが専門家の手で一つ一つオーダーメイドされる事すら知らなかった。
佐喜眞が手掛けるもので注目を集めているのが、膝の装具。老化が原因で起こる「変形性膝関節症」の痛みを和らげる物。例えるならサポーターと可動する支柱を組み合わせたようなもので、特に普通の装具と比べ軽く動きやすいのが特徴だ。番組の中で、20年以上も足の痛みに苦しんでいた男性が佐喜眞の装具を身につけるシーンがあった。つけて歩いた瞬間、男性は前より楽そうに歩き始め「先生が来るのを待っとったんですよ」と笑顔で話した。
佐喜眞は自身が作る装具を「希望を与える道具」だと例えている。きっとそうなのだと思う。私もときどき短期間腰を痛めることがある。もし長期に渡る痛みがあり、それが装具で楽になるならと想像すると、装具のありがたみが分かる気がする。体の不都合が解消されると晴れやかな気持ちになる。ニキビでさえ直ると嬉しいものだ。ましてそれが体の苦痛なら、それは人生すら変えてしまうほどの喜びに違いない。喜びを作る佐喜眞の仕事もまた、きっと充実したものだろう。