「恋空」
能面のように表情乏しい新垣結衣、まだ力不足

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   「世界の中心で、愛をさけぶ」以来、柳の下のどじょうを狙う戦略の東宝は若い二人の純愛物を何本も立て続けに送り出す。この「恋空」は、主人公のどちらかが不治の病という韓国式メロドラマで基本を作り、二人を結ぶツールは携帯。会話、メール、写メール、TV電話と120%使いまくる。なるほど手紙や固定電話のアナログ時代は終わったな、と思い知らされる。原作は、大ヒットを飛ばしたケータイ小説で、美嘉の実体験に基づいて綴られたという。「恋空~切ナイ恋物語~」の題名で書籍化もされ、130万部を突破したそうだ。

(C)2007映画「恋空」製作委員会
(C)2007映画「恋空」製作委員会

   ごく普通の高校一年生美嘉(新垣結衣)は、失くした携帯を見つけてくれた隣のクラスのヒロ(三浦春馬)と付き合い始める。長身、イケメン、髪を真っ白に染め(年配の筆者には気持ち悪い)、他校にガールフレンドがいるというモテ男。美嘉はレイプされたり、ヒロとの愛の結晶を流産するなどの悲惨な事件に出合う。昔だったらヒロインは断崖から身を投じるところだ。意外にも美嘉は悲劇を簡単に?乗り越え、ヒロはそんな美嘉を全身全霊で愛する。しかし2年に進学すると突然ヒロは学校にも来なくなり別れ話を持ち出し、美嘉の前から姿を消す。何が何だか分からない美嘉は優しくしてくれる大学生、優(小出恵介)と親密な関係になる。

   高校一年と言えば16歳。レイプされたり流産したり、今の子はどうなっているのだろう?と余計なことだが思い悩む。しかし、ヒロとの初体験のベッドシーンはジャケットを脱いだだけできちんと制服を着ているし、レイプシーンも着衣は僅かに乱れる程度で驚く。当然裸にならなければならないだろうし、衣服は3人に乱暴されボロボロになるだろうと思うが、全くリアリズムが無さ過ぎる。新垣に気を使った演出なのか?それなら役者も監督も失格だ。

   美嘉が16歳で複数の男と寝ることを何とも思わないのにも付いて行けない。朝帰りした美嘉の家族は一言も咎めず、中流家庭の筈なのに、と気にかかる。新垣は主演で出ずっぱりだが、表情に変化が乏しい能面のような顔は、大役には力不足だ。ヒロの三浦春馬は一途な少年を好演している。優役の小出恵介はこの二人より経歴も歳も上で、落ち着いた演技が画面を引き締める。

   監督の今井夏木の経歴は分からないが、未熟な演出でがっかりする。タイトルになる「俺は空になって美嘉のことを見つめているよ」と言うクサイ台詞にオジサンはシラける。随分会えなかった卒業時、二人が良く利用した図書室の黒板に「幸せでしたか?」「とても幸せでした」とある相聞歌的メッセージは印象に残る。その下に、今月の推薦図書がポール・オースターの「幽霊たち」とあるが、程度の低い高校でこんな難しい本を読むのかよ?と疑問。留めの「元気ですか?私は今でも、空に恋しています」が空虚に響く。

恵介
★★☆☆☆
恋空
2007年日本映画、東宝配給、2時間09分、2007年11月3日公開
監督:今井夏木
出演:新垣結衣 / 三浦春馬 / 小出恵介
公式映画:http://koizora-movie.jp/index.html
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