「ふみ子の海」
盲目少女への厳しい「愛のムチ」 高橋惠子が上手い

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   映画はベタベタした演出に脚本。篠原髙志の本も近藤明男の監督も出来はそんなに良くないが、物語自体には泣ける。なんと言っても実話をもとにしているからだ。新潟県高田盲学校で教鞭をとり、生涯を盲目の子供たちの教育に捧げた粟津キヨをモデルにした盲目の「ふみ子」の少女時代を描く。

(C)2007 C.A.L
(C)2007 C.A.L

   昭和の始め。新潟の寒村で、貧困から栄養失調になり盲目になった少女ふみ子。女手一つでふみ子を育てる母チヨ(藤谷美紀)は、滝壺薬師の住職慈光(高橋長英)に眼病祈願を依頼するが、決して目が良くならないことを知る慈光は「心の中まで闇にしちゃなんねえぞ」と諭す。母はふみ子を海に連れて行く。キラキラ光る波を感じるふみ子は、母が死を決意したとは知らず「海って、きれいだね」と呟く。その言葉で翻意した母の思い出も含め、そのとき拾った巻貝はふみ子の終生の宝物となる。

   8歳になったふみ子は頭の良い子で、慈光も母も盲学校へ進学させたいが、貧しさゆえかなわない。母が病に倒れたこともあり、高田のあんま屋、笹山タカ(高橋惠子)のもとに弟子入りする。同じ盲目なのにタカのしごきは凄まじい。だが芸者の〆香(遠野凪子)や麩屋のおじさん(山田吾一)の励ましがふみ子を慰める。だからタカのしごきや〆香に横恋慕する上田中尉(遠藤憲一)の意地悪にも耐えられる。そして何よりも盲学校の先生高野りん(高松あい)の学問への導きで、ふみ子の波乱万丈の少女時代の物語が繰り広げられる。原作の地元である柏崎や上越でオールロケ。越後の海や深い雪は美しく、冬のどんよりした鈍色の日本海が苦悩の多いふみ子の未来を予見する。

   ふみ子は、軍人の意地悪から商売に差し支える、とタカに追い出される。置き忘れた点字の本を届けようと、同じ弟子の盲目の友達サダが追いかけ、吹雪の夜に盲学校の門前で行き倒れ死ぬ場面に泣けた。自分のせいでサダが死んだと、大切にしていた点字本をカマドにくべる。憧れのヘレン・ケラー女史が長岡にやって来た時、苦労した母チヨが死ぬくだりはもっとドラマティックだ。

   冷徹に見える心の底に、盲目の少女の将来に備えさせる暖かい思いやりを秘めたタカを演じる高橋惠子が上手い。子役で主役ふみ子に扮する10歳の鈴木理子も一生懸命の芝居をしている。監督は近藤明男。長い助監督を経て85年に「想い出を売る店」というマイナーな映画でデビューしている。

恵介
★★★☆☆
2006年日本映画、パンドラ配給、1時間45分、2007年10月13日公開
監督:近藤明男
出演:鈴木理子 / 藤谷美紀 / 高橋惠子
公式サイト:http://www.fumikonoumi.com/
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