元暴走族でヤクザ予備軍だったゲッツ板谷の原作を、「凶気の桜」その他で助監督を務めてきた隅田靖が初監督。松田優作の次男坊、翔太を主演に映画化した。立川のつっぱり中学生のヤンキーたちのハチャメチャ喧嘩騒動記だ。これが意外に面白く楽しい。タイトルも煙草「マルボロ」を文字った「ワルボロ」で上手い。
(C)2007『ワルボロ』製作委員会
TV「花より男子」や「ライアーゲーム」で人気の松田翔太は21歳。どうヒックリ返しても中学生では無いが、見ているうちに気にならなくなる。それに演技力は兄の龍平よりある。ツッパリの仲間「タッチ」の福士誠治なんて24歳の中学生だ。同じヤンキー役の城田優も中学生に見えない22歳。一番若いマドンナ役の新垣結衣も19歳。年増で老けた中学生たちの青春バイオレンス物語だ。
1980年代、東京の外れの立川市。バカなヤンキーたちは突っ張って喧嘩に明け暮れる一方、真面目な中学生は田舎で閉塞し、「立川脱出」のため真剣に勉強に励んでいる。ガリ勉派だったコーちゃん(松田)は授業中に絡んで来たヤッコ(福士)に切れて大暴れ。チョーパン(頭突き)を食らって鼻血が出てしまい、憧れのマドンナ、山田(新垣)の顔も見られないくらい恥ずかしい。だがガリ勉から解放され、スガスガしい気持ち。
この日を境にコーちゃんは優等生から転身し、ヤンキー・立川三中の「錦組」一員となり、他の中学校の悪餓鬼どもとの戦争に突入することになる。髪はリーゼントのオールバック、短い学ラン、ボンタンに、カバンの中の教科書は全部捨て、鉄板を入れて喧嘩をしに登校する。しかしそれぞれ伝統のボスを持つ立川の中学校群は強敵揃い。それに「治外法権」の朝鮮人学校の糞餓鬼どもも加わって大乱闘が始まる。中学生ヤンキーたちには「落とし前」をつけているのに、朝鮮人学生とは「けじめ」をつけていないのは何故だろう?
喧嘩シーンにリアリティあるのが良く、映画の興味を繋ぎとめる。他の映画のような、形だけの殴り合いやキックや取っ組みなどでは無い、コンタクトファイトだ。敵のボスを倒すバックドロップなどは、決まった瞬間に地響きが砂埃りを上げて凄い。引き換え、脳腫瘍か致命的な病に冒されたマドンナとのロマンスは淡々と描かれている。中学生だから深追いしなくて、バイオレンスに集中したのは賢明だ。
どーせつまんねえだろう、付き合いで見てやろうか、と見始めたら面白く、最後まで退屈もしないで見終わる。バカ当たりはしないだろうが、東映は「大奥」みたいなTV番組の映画化 なんぞに付き合わず、こういう佳作の小品の積み重ねで過去の栄光を取り戻せるんじゃないかな。