国有林に出資し、伐採後に利益をえる「緑のオーナー制度」。林野庁が積極的に勧誘していた商品だが、出資者の9割以上が事実上元本割れしていた。すでに新聞でも報じられているが、「国が組織ぐるみ詐欺を行っていたといわれても仕方がない」(大澤孝征弁護士)。今朝の『スパモニ』は、その実態に迫った。
この緑のオーナー制度は、赤字続きに窮した林野庁が国有林の手入れ、造林のために1984年度から98年度までに、全国4700か所の国有林を対象に、延べ8万6000の個人・団体から出資を募り500億円を調達した制度だ。
今回問題になったのは、99年度から06年度までに満期を迎えた727か所の配当。このうち、多少でもリターンがあったのは27か所で、大半は元本割れだった。しかも、1口50万円当たりの平均受取額は、06年で29万5000円と半分近い額しか戻ってこなかった。
なぜ元本割れしたのか? 実は、輸入木材の増加を背景に、スギやヒノキなどの木材の価格は80年ごろがピークで、それ以降は下落傾向をたどっている。つまり公募を始めるはるか前から価格の上昇が望める状態ではなく、投資対象としてはハイリスク商品だった。
それにもかかわらず、林野庁は「資産形成のために」をうたい、国会で「詐欺的商法では?」と追及されても「6~7%といった利回りになる」と答弁するなど、積極的に勧誘。公募の説明資料や契約書にはいっさい元本割れのリスクを記載していなかった。
林野庁では「金融商品ではないので、リスクを記載する義務はない」と突っぱねているが、元検事の大澤は「原野商法と同じ。資産形成のためと誘っているのだから客観的にみて金融商品で、民間なら詐欺罪で捜査対象です」。
「裁判になったら勝てますか?」という質問にも、大澤は「国家賠償の対象になります。勝てると思いますよ」。
社保庁の年金問題に続いて林野庁。信用度は「最高位」であるはずの国の制度が当の昔にガタガタと瓦解していたことが今、次々に明るみになっている。