タイトルに「ヨメ」「嫁」「姑」などとつくものは毛嫌いしていた私でした。だって見る前からわかっちゃう気がしてたんだもん。
でも、でも、私が悪うございました。歌舞伎に十八番、狂言に太郎冠者・次郎冠者、漫才にボケ・ツッコミがあるように(?)、TVドラマにはヨメ・シュウトメがなくてはならないものなのでした。
思えば、あの懐かしの「羅刹の家」が「陰の戦い」の極致だとすると、これは「陽の戦い」の極致ね。でも共通するのは両方とも笑えること。ヨメ・シュウトメ・バトルっていうのは、シリアスにしてもコメディにしても、やっぱり笑っちゃうのはなぜかしら。
ヨメの真琴(江角マキコ)は40歳、今時の晩婚化を取り入れているところが新しい。自分で起こしたおむすび会社の社長である。夫の三四郎(沢村一樹)は37歳、年下っていうのも今風ね。で、別の会社の秘書課勤務。それぞれ社長と秘書の仕事が身についているから、つい私生活でも出てしまうのがまたシュウトメ千代子(野際陽子)のシャクのタネ。
真琴はさっそうと真っ赤なオートバイにまたがり、会社直行、「行ってきまーす」。
「行ってらっしゃーい」と手を振って見送り、駅まで歩くのは三四郎。後ろでホウキを持った千代子が歯ぎしり。
真琴の趣味はフラダンス。一方、千代子の趣味は三味線。怒りが爆発寸前になると、二人ともおっぱじめる。三四郎と父親(伊東四朗)は、「ご近所迷惑だ」と力なくつぶやきながら、あわてて雨戸を閉める。
フラダンスといっても、「アロ~ハオエ~」に合わせて手をヒ~ラヒ~ラ、なんて生やさしいものじゃない。「ドンドコ、ドンドコ」のタイコに合わせ、真っ赤な腰ミノを着けた腰をグイッ、グイッ。手に持ったデカいポンポンをバッサバッサ。そばによったらぶっ飛ばされそうに振り回す。
千代子の三味線も「チン、トン、シャン」などという風情とはほど遠く、「ベベン、ベン、ベン」。これは格闘技か? 「まったく、怖ろしいヨメが来たもんだっ!」と思いきり掻き弾いたとたん、「ベーン、バツン」と弦もブチ切れる。
このフラダンス・三味線合戦が毎回見ものだ。「ドンドコ、ベンベン」と交互に映される二人の鬼のような形相も、女優としてここまでやるか、というくらいハジケていて気持ちいい。
さすが、江角マキコと野際陽子。江角は「ショムニ」の仰天OL千夏以来の大型キャラだ。パワーアップして戻ってきてくれて、うれしいな。野際陽子も大好きな女優の一人だ。
さて、二人のバトルだが、今のところシュウトメの千代子がやや優勢か。負けるな、真琴、私がついてるぞっ。
※地獄の沙汰もヨメ次第(TBS・木曜21時)