番組きっての武闘派リポーター、井口成人。姫路の「ゆかたまつり」にやってきた。まつりで問題行動を起こす「徒歩暴走族」を取材するためである。
「徒歩+暴走」とは意味が計りかねるが、歩いてやって来る暴走族(のメンバーたち)というほどの意味らしい。が、この連中、乗りがたりない。警官隊となれ合うように揉み合ったり、すぐ逃げたりで、絵になる騒動にならない。
ジリジリとする展開。そして、ついに待望の喧嘩が発生した。ところが、殴っているのは「一般人」、殴られてるのが暴走族だという主客転倒。道路に倒れた暴走族を一般人の集団が殴る蹴る――が止まらない。そこで正義のリポーター、井口が「やめろー、やめろー」と叫びながら人混みの中に突進。暴走族を輪の中から引っ張りだし、逃がしてやった。
字幕には「井口リポーターが若者を救出」などと書かれ、迷惑な徒歩暴走族を糾弾するシナリオは、人命救助のリポーターを称える内容に急遽変更。見せ場をつくった井口は、カメラに向かって「二、三発殴られちゃったよ」と飛びきりの笑顔で話していた。
ところで殴られたのは腹らしいが、カメラはシャツの上から腹部を映すのみだった。映像で「殴られた」証拠を確認できなかったのはテレビ的にマイナスだ。
文
ボンド柳生