NYマンハッタンのアッパーウェストで、セントラルパークの西側にあるアメリカ自然史博物館。正面入口を入ったホールには巨大な恐竜の骨格が飾ってあり、学童に分かりやすく歴史を説明するため、本物そっくりの蝋人形が演じる有名な史上場面をガラスのショウケースに陳列してある。夜になると彼らに命が吹き込まれて動き暴れまわるのが、この映画の肝。激戦の日本の映画興行界で4週トップを走って40億円の興収が見えたヒット作だ。
(C)2006 TWENTIETH CENTURY FOX
脚本はT・レノンとR・B・ガラント。2人ともNY育ちで子供の頃から自然史博物館は遊び場だった。ショーン・レヴィ監督は「ジャスト・マリッジ」「ピンクパンサー」を経てコメディは得意。日本でコメディアンは人気が今ひとつだが、主演のベン・スティラーは「ミート・ザ・ペアレンツ」シリーズのヒットで親しまれている。ベテランのロビン・ウィリアムズは軍服に身を固めた乗馬姿で、いつもと違って可笑しい。同僚の警備員3人は大ベテランたち。往年の「少年の町」などの人気者ミッキー・ルーニーが87歳で、なお元気だ。
何をやっても駄目男のラリー(スティラー)。妻のエリカ(K・レイヴァー)には愛想をつかされ離婚。息子ニッキー(J・チェリー)は新しい父親になついてしまう始末。なんとしても父としての面目を立てたいラリーは自然史博物館の警備員の仕事につくが、警備は夜だけ。先輩の警備員セシル(D・ヴァン・ダイク)、ガス(M・ルーニー)、レジナルド(B・コッブス)の3人は、鍵束と懐中電灯と注意書きを渡すと何やら秘密めいた笑みを浮かべてラリーを一人残す。警備で歩くラリーに突然、展示のティラノサウルスの巨大な骨格が襲い掛かる。モアイ像が話しかけ、フン族は槍で攻撃し、ライオンは牙を剥いて追いかける。ミニチュアのローマ人とカウボーイたちは大戦争を仕掛けている。カウボーイたちのロープで縛られるラリーはまるでガリバー旅行記。頼りになるのは馬に乗ったテディ・ルーズベルト大統領(R・ウィリアムズ)。ラリーの相談相手になり助言を与えるが、大統領も惚れたインディアン娘サカジャウィア(M・ペック)の前ではてんで意気地が無い。離婚した妻の相手が金持ちで息子ニッキーに優しいので、ラリーそっちのけで懐いてしまうのに慌てる。警備員なんてつまらない仕事だが、夜になるとワンダーランド。そこへ息子を呼んで自分への関心を取り戻そうとする。
なぜ展示物が生命を取り戻すかとか、同僚たちの悪企みなどはつまらない作りで物語の展開として興味も湧かない。楽しいのは教科書で習った歴史上の蝋人形たちの活躍で、ある程度、業績や性格などを知っているから、生き返り動き出すと愉快で楽しいのだ。恐竜に襲われてパニックの主人公が注意書き通りに骨を投げると、追っかけて拾って来るのには大笑いする。
2006年アメリカ映画、20世紀フォックス配給
監督:ショーン・レヴィ
出演:ベン・スティラー / ロビン・ウィリアムス