七色の声を持ち他人の声も聞き分けられる14歳の少女と、ロボットおたくの青年が、スパイになって大活躍...って、あらすじ読んでも???だった私。なのに、始まって5分でトリコになってしまった。
ニコ(大後寿々花)は中学生。トラブルを避け、毎日うまくやり過ごすことだけを考えて生きている。一方のロボ(松山ケンイチ)は、ため息ついただけで痴漢と間違えられてしまう冴えないヤツ。そんな二人が、3日間しか記憶がもたない男・三日坊主(中村獅童)と出会い、友達になる。
その男、実は殺し屋。「どうせ忘れるから殺してもいいなんてウソ! あなたのことは私がずっと覚えている」と、彼の犯罪を必死に食い止めるニコとロボ。だけど仕事をしくじった男は結局、組織に始末されてしまう。
助けたつもりだったのに、やりきれない現実。ニコはそれを自分の中で終らせようとする。めんどうなことなど誰も知りたくないからという彼女に、ロボが言う。「子供がそんな気の遣い方するな。一人で抱え込むな」。なんだか泣けてきた。悩んでいる子供たちに、誰かそう言ってやってくれ。
人は一人で生きているのではない、世界と関わっていかざるを得ないことをニコは知る。
ところで三日坊主は、記憶の手がかりにあらゆるものを保存していた。このドラマには物集めに執着する人がいっぱい。部屋中フィギュアだらけのロボ、ニコの父親(塚本晋也)は牛乳瓶のフタ、姉(村川絵梨)はブランドのタグ集めが趣味。それは自分の生きた証だから。そういえば私も、好きなアイドルの切り抜きを集めたなあ。興味が他の人に移っても捨てられない。老後の楽しみにするんだから。
夫の集めた紙キャップを見て、あんたが死んだらすぐ処分するというニコのお母さん(片桐はいり)。私の宝物がいつかゴミになっても、私を覚えていてくれる人は、いるだろうか。
心惹かれるセリフが随所にちりばめられていて、思わずメモしたくなる。なんだこのワクワク感は! あっぱれ日テレ、よくぞこの時間帯に、茶の間に馴染みの薄い役者集めて新鮮なドラマを作ったもんだ。マニアに語り継がれる伝説の作品になっちゃうかも。このクオリティが続くことを祈る。