「ハンニバル・ライジング」
人食い殺人鬼誕生と日本人妻

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   「レッド・ドラゴン」や「羊たちの沈黙」「ハンニバル」以前の時代、ハンニバル・レクターが人食いの殺人鬼になる路程を描いている。トマス・ハリスが原作と脚本を書いているからシリーズを続けるためのキワ物とは違う。

ガスパード・ウリエル扮する若き日のハンニバル・レクター
ガスパード・ウリエル扮する若き日のハンニバル・レクター

   第二次大戦のリトアニア。ハンニバルは貴族の両親と妹で幸せに広大なレクター城に住む。そこへ第二次大戦。ドイツナチスの侵攻で田舎の別荘に逃れるが、そこもナチシンパの軍隊に襲われる。両親は殺され、幼い妹とハンニバルは囚われ荒くれ男どもと厳しい越冬。食料は全く無く全員が飢え、男どもはいたいけない妹に目をつける。

   戦後10代後半になったハンニバルは孤児院を脱走してパリの叔父を訪ねるが、そこに彼の美しい日本人妻ムラサキがいる。彼女は武術にたけハンニバルに剣道を叩き込む。戦国時代の戦闘絵巻を見せ、敵を討ったら生首を晒すことを教える。ハンニバルは彼の長年の夢だった医学校に入り、本格的に人体の構造や解剖を覚える。だが毎晩妹が男どもに食べられてしまった悪夢を見る。夢を止めるには彼らに復讐するしかない。

   ここでのハンニバルは過去の悲劇の復讐を果たす良いヒーローだ。最初の殺人は市場の肉屋。ムラサキと買い物中「日本人の女のアソコは横になっているか?やらせろ」。教養の無い欧米人の間では定説だった。湖の岸辺で肉屋を待ちうけ、「アソコが横か」とほざく彼の腹を横とはこう言うことかと、日本刀で一文字に切りつけるシーンは爽快だ。

   監督はピーター・ウエバー。「真珠の耳飾りの少女」では堅実な演出だった。主人公と未亡人の芽生える愛情描写は上手いが、活劇は少しぎこちない。ハンニバルのガスパード・ウリエル(ロング・エンゲージメント)がその成長過程で芯の強い青年を好演している。日本人に扮する臈長けたG・リーが大活躍。剣道の達人で日本の文化、宗教、哲学、殺人術すべて若者に教え込む。

   悲しいのは何故日本人役を日本の女優が演じないのか?「SAYURI」もそうだった。脇で桃井かおりが僅かに気を吐くが、主要な役は皆中国人女優。Z・ツィイー、M・ヨー、それにG・リーが見事に祇園の女たちを演じる。

   国際的な男優は渡辺謙(ラストサムライ)、真田広之(サンシャイン2057)、役所広司(バベル)などいるが日本には女優がいない。菊地凛子がアカデミー助演女優賞候補になったが、あれは一発芸。全裸ヘアヌードで全篇動き回れば何か貰えるよ。今後とても国際女優で通用するとは思えない。

恵介
★★★★☆
ハンニバル・ライジング(Hannibal Rising)
監督:ピーター・ウエバー
出演:ガスパード・ウリエル / コン・リー
2007年アメリカ映画・東宝東和配給・2007年4月21日日劇PLEXほかで全国公開・1時間57分・R-15指定
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