誰でも簡単に、子どもの字体を表現できるユニークなフォントが公開された。
小学1年生の子どもが書いた7000文字の漢字をトレース(敷き写し)して生み出された「全児童フォント(フェルトペン)」だ。2018年11月5日にツイッターに投稿されると反響が大きく、テレビにも取り上げられた。
原稿用紙に一生懸命漢字を書くわが子の姿がきっかけに
「5年前、当時小学1年生だった息子が書く、『その時にしか見られない独特の筆跡』を、記録として残しておけたらという思いから始まりました」
J-CASTトレンドの取材に対し、制作者の「たぬき侍」さんは答えた。これまでに「ようじょフォント」や「自由の翼フォント」などのフリーフォントを手掛けてきた人物だ。「漢字をもっともっと書きたい」と学習意欲を見せる息子が、たぬき侍さんからもらった原稿用紙に一生懸命漢字を書く姿を見ているうちに、「ここまで頑張っているなら、せっかくだからフォントにできないか」と思い立ったという。
気が向いた時や手が空いた時にゆっくりとトレース作業を進め、「実際に作業していた時間だけを足し上げると半年くらい」が制作期間だそう。
「小学1年生が書いたものなので、誤字もかなりありましたが、本人が書いた線を守りつつ、他の漢字などを参考に補っています」
余白に書いていた「あの」イラスト
「全児童フォント(フェルトペン)」には、小学校で習う教育漢字1006文字を収録している「無料版」と、教育漢字を含む第一水準・第二水準・IBM拡張文字など6700文字超を収録している「有料版」(1410円)の2種がある。「無料版」では難しい漢字が「うんち」のラクガキでほとんど隠されてしまう。子どもがよくいたずらで描くヤツだ。
フォントの配布ページでは、太宰治著「走れメロス」の冒頭部分を使って表示例としている。「メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した」の1文が、無料版では「怒」や「邪」「智」「虐」といった漢字に限り、チラっとしか見せていない。なぜ「うんち」イラストを使うアイデアが生まれたのかを尋ねると
「息子が原稿の余白に書いていたのを見つけ、『これは使える』と思ってトレースしました」
とのことだった。