TBSのテレビ連続ドラマ『天皇の料理番』が好調だ。第8話の6月14日(2015年)の視聴率は15.3%となり、初回以来最高を記録した。一度低下したが、すぐに持ち直した。いよいよ「天皇の料理番」として佳境に入る。実はこのドラマ、1980年版、93年版に続く3回目だ。人気の秘密は何か。「料理番」とはどんな仕事なのか。また、その魅力とは。改めて探ってみる。
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家庭料理に革命を起こす
今の日本、グルメブームは衰え知らずだが、冷凍食品もインスタント食品も畑の作物も痩せ細り、栄養素が損なわれている。食生活は大丈夫なのか。
『体がよみがえる家庭料理 ルネサンスごはん』(著・弓田亨、1620円、祥伝社)の著者はフランス菓子のベテランパティシエだが、体が本当に喜ぶごはんをつくるためには、と食のあり方を追求している。
故郷の福島・会津若松で母がつくってくれた味の記憶を追い求め、「いりこ(煮干し)の出し」「灰汁抜き・下茹でしない」「砂糖・みりんを使わない」という原則にたどり着いた。日本人の基本は「米と味噌」だと訴える。アトピー性皮膚炎、花粉症、肌荒れなどの改善報告が寄せられてきた。時代を変える「料理番」をめざす。
日仏またがる鍋の家庭料理人
日本の家庭料理に鍋は必需品だ。フランスでも魚肉や野菜を使う鍋料理が欠かせない。おいしいだけでなく、栄養があり、下ごしらえをしたら煮るだけなので失敗することもない。
『鍋ひとつでできる お手軽フレンチ』(著・ダニエル・マルタン、1836円、サンマーク出版)は、フランスと日本で長年、料理人として活躍してきた著者が日本人向けに本場の家庭料理を披露する。
パリの「マキシム」や「ホテルリッツ」で務め、1987年に銀座の「マキシム・ド・パリ」の総料理長に、91年には「ル・コルドン・ブルー東京校」の校長兼主任教授に就任した。都内でレストランや料理教室を開き、ソースやドレッシングなど多くのヒットを生んでいる。前作『フライパン1本でできる お手軽フレンチ』も好評だ。
宮中の台所を預かって
『味 - 天皇の料理番が語る昭和』(著・秋山徳蔵、864円、中央公論新社)の著者は、日曜夜のTBSドラマ『天皇の料理番』の俳優・佐藤健が演じている主人公、秋山篤蔵本人である。作家・杉森久英の原作では秋沢篤蔵、ドラマでは秋山篤蔵とされているが、本名は秋山徳蔵である。
明治21年(1888年)に福井県に生まれた。ふとしたことからカツレツを一口食べ、まだ見ぬ西洋料理のコックを志す。フランスで修業後、大正初め宮内省(現宮内庁)に入り初代主厨長に任じられ、半世紀以上にわたって昭和天皇の台所を預かった。
フランスの修業時代、昭和天皇の嗜好、宮中のしきたりなど料理にまつわるエピソードや料理に対する探求心がうかがえるなど貴重なエッセイとなっている。日本の西洋料理発展のために大きく貢献し、フランス料理アカデミー名誉会員にもなった。