テレビはびっくり箱だ。新奇な趣向が次々に出てくる。一体どこからアイデアが生まれてくるのか。人気番組の制作者たちの頭の中はどうなっているのだろう。テレビの内側を見れば、仕事に役立つヒントやコツが隠れているに違いない。意外に身近なところや平凡な暮らしの中に潜んでいるかもしれない。いつもと違う角度でテレビを覗いてみよう。
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いつも最下位の「1番外地」
「寄らば大樹の陰」という言葉があれば、「鶏口牛後」という言葉もある。歯車の一員でも大企業なら安心という人がいれば、中小企業でトップになりたいという人もいる。
『伊藤Pのモヤモヤ仕事術』(821円、集英社)の著者・伊藤隆行は、在京キー局の中で開局以来最下位というテレビ東京に就職した。日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジの視聴率順位で「3強1弱1番外地」などと呼ばれていたが、テレビ東京はいつも最下位の「1番外地」だった。
「伊藤P」のPはプロデューサーの頭文字だ。最下位のテレビ局で育って、企画を出し、仕事をし、挑戦的な番組を手掛けてきた。「モヤモヤさまぁ~ず2」も深夜帯からゴールデン帯への進出を果たした。その秘密とは――。17年間のテレ東で得たテレビマンとしての唯一のポリシーは「誰でも自分の中の1%だけは天才です。だけど、誰でも自分の中の99%は完全な凡人です」と語る。
「モヤさま」に出演中の「さまぁ~ず」の2人、大竹一樹・三村マサカズの「伊藤君がいるといないとでは、ムードが違う」や、以前に出演していた大江麻理子アナウンサーの「伊藤Pの源とは?」といった証言もあり、テレビ界の内情も伝える。
どんなユニークな発想法があっても
「アイデアを出せ」といわれても、名案が浮かんでくるものではない。悩み苦しんでも、無から有を生じることもない。
『放送作家が教えるアイデアがすくすく育つ思考のヒント』(著・山名宏和、734円、サンマーク出版)によれば、アイデアとは生むより育てるものだというのが持論だ。『行列のできる法律相談所』『ダウンタウンDX』『ガイアの夜明け』など数々の人気番組を世に送り出している放送作家の思考法である。
どんなにユニークな発想法があっても、それだけではアイデアを作り出すことはできない。材料の種を集め、育てていくことによって商品の形になるというわけだ。アイデアの種を見つける方法は特別なことではない。毎日のふだんの生活の中で、ちょっとした視点を変えると新しい種が見つかる。「男性は女性に、女性は男性になってみては」「白雪姫が絶世の不細工だったらと想像したら」といった35のヒントがある。
なくてはならない裏方さん
テレビ番組リサーチャーという職業があるとは知らなかった。番組の終了間際の画面下のエンドロールに載っている。よく見ないと見過ごししてしまうが、現在のテレビ番組制作にとってなくてはならない仕事だ。
『プロフェッショナルの情報術 なぜ、ネットだけではダメなのか?』(著・喜多あおい、1512円、祥伝社)は、現役のテレビ番組リサーチャーが初めて公開したリサーチのノウハウである。
情報バラエティやクイズ、ドラマなど様々の番組制作に関して、プロデューサーや演出家から依頼され、必要な情報を収集し提供する。クイズ番組で「ピンポーン」や「ブー」の判断をするための証拠を集める「裏取り」も重要なことだ。
的確な情報はどのように集めるか。いきなり図書館に出掛けて行ったり、インターネットを検索したりしても確率は非常に低いという。サラリーマンや学生にとっても情報を調べる力や検索スキルを上達するために役立ちそうだ。放送界に優れた功績をあげた女性に贈られる「放送ウーマン賞2014」を受賞した。