「見栄えが悪い」「華やかではない」などの理由で、女性に職場でのメガネ着用を禁止する企業などが多いことがインターネット上で話題になっている。
多くは接客業の職場だが、問題なのは、たとえば同じ「受付」でも男性のメガネ着用は認めていることだ。「女性差別だ」という怒りの声が上がっている。
百貨店受付、老舗料亭、ホテル接客業、美容クリニック......
話題のきっかけになったのは、ビジネスニュースサイト「BUSINESS INSIDER」(2019年10月25日付)で、竹下郁子記者が書いた「職場でメガネ禁止される女性たち。『まるでマネキン』受け付けから看護師まで」という記事だ。
記事では、「ルールによって職場でメガネをかけることが許されない女性たちがいる」として、大手百貨店の受付、ショールーム、宴会場のスタッフなどの接客業から、美容クリニックの看護師などの例をあげている。
メガネ禁止の理由は「華やかさを求められる」(百貨店受付)、「メガネを上げる仕草が不衛生」(ホテル宴会場接客業)、「技術よりも美しさ、マネキンであることを求められる」(美容クリニック看護師)などなどだ。そして、このルールが理不尽なのは、同じ百貨店受付でも「男性はメガネOK」であることだ。要するに女性がメガネをかけると、「見栄えが悪くなる」ということらしい。
この記事は反響を呼び、「グッどラック」(10月30日放送)、「スッキリ!」(11月5日放送)などワイドショーでも取り上げられた。「スッキリ!」では、「メガネ禁止をルール化」している職場を取材している。禁止の理由はこうだ。
国内化粧品会社の店頭販売美容部員「自分のメイクをお客さんに見せる際、邪魔になる」
老舗料亭「和装に合わない」
国内航空会社の客室乗務員「安全上の問題。緊急時、機内から避難する際にメガネが割れると、本人や周囲に危険が及ぶため男女問わずメガネ着用禁止」
ただし、「スッキリ!」によると、エールフランンス航空、KMLオランダ航空、フィンランド航空など複数の海外航空会社では客室乗務員のメガネ着用はOKだという。
J-CASTニュース会社ウォッチ編集部が、日本航空の担当者に取材すると、「見かけの問題ではなく、純粋に安全のため」と強調し、こう説明した。
「乱気流発生などの緊急時には、メガネが外れたり割れたりする危険があります。客室内に煙が充満するとメガネでは見えにくくなるし、避難のため緊急脱出スライドで滑り降り時もメガネは外れやすいため、キャビンアテンダント(CA)は男女ともメガネ禁止にしています。ただ、最近はCAもシニア化が進んでいますから、作業上必要な場合は老眼鏡の着用を許可しています。それに空港の接客スタッフは、お客様に不快感を与えない範囲でのメガネの着用を認めています」
とのことだった。
「着物にメガネはおかしい」「巫女は神様に仕える身だから」
「ひええ~、そんな職場もあるんだ」と、インターネット上では、「女性メガネ禁止職場」のハッシュタグも立ち、体験談や批判の声が相次いだ。
まず、多いのが「和装で働く職場」だ。
「和食の仕事をしていましたが、大きな店でも個人店でも9割注意されます。その理由が『着物にメガネはおかしいでしょう』『お料理を出すとき、落としたらどうするの?』『メガネ越しにお客様を見るのは失礼よ』というもの。理解に苦しみます」
「巫女のアルバイトで、『神様に仕える身だから個性を出してはダメ』と言われた。男性宮司のメガネはオッケーなのに」
「私も旅館バイトの時はメガネ禁止だった。うっかりコンタクトを入れ忘れた時はバックヤードの仕事に回された。男性は和装ではなかったのでメガネOKだった」
「元ホテルサービススタッフです。洋服でのサービス時は金縁のおとなしいメガネで問題ありませんでした。和服でのサービス時はメガネ禁止でした。理由はなく『ダメなものはダメ』でしたね。和服にはメガネが似合わないとも聞きましたが、不便でした」
接客サービス業では、広く、当たり前のように「女性のメガネ禁止」がルール化されているようだ。
「私もサービス業の内勤として、入社当日に『この会社、女はメガネ禁止よ』って言われて、『コンタクトレンズ買うお金ありません』って嘘ついたら許可がでた。薄給のくせに従業員に高度な要求してんじゃねーよ」
「私も受付のときメガネ禁止だったな。目が腫れたときメガネで行ったら、先輩方に『今どきの若い子はすごいね』『私だったら無理だわ』『恥ずかしい。あり得ない』とか文句を言われまくったな」
「うちのエステサロンもメガネNGだ。ものもらいができて、コンタクト片目入れられないから、メガネで出勤したいと店長に話したら、『片目眼帯で、片目コンタクトで出勤して』が答えだった。この時の眼帯とメガネの差って何だったの?」
「私もホテルでバイトした時に実際に経験しました。シンプルな眼鏡もNG。ドライアイやアレルギーなどでコンタクトが使用できない人もいます。眼鏡が医療器具であることを知ってもらわないと!眼科の先生にコンタクトレンズつけている人がいないことを気づいてほしい」
メガネが医療器具であり、健康上の問題でコンタクトを付けられない女性が多くいるのに、「メガネ禁止」を強制するのは「女性差別」のうえ「人権侵害」だと多くの女性が憤っている。ところが、当の医療専門家たちが、メガネが医療器具であることを理解してないのだから何をかいわんや、だ。
「私もある医学学会の受付バイトに応募したことがある。募集要項にメガネ禁止が書いてあり、そのためにコンタクトを作れと言われたけど、コンタクト代よりバイトの日給の方が低かったから仕事そのものを断った。メガネって補助医療器具だから補聴器と変わらないと思うんですが」
ドラマでは「メガネ女子」ヒロインがブームだが...
ところで最近、「メガネ女子萌え~!」がブームになっている。昨年(2018年)12月、東京メトロCMで「メガネ女子」の石原さとみさんが「おでん、ふ~ふ~」と言って、メガネを曇らせるシーンが「超絶可愛い!」と人気になった。
今年(2019年)に入り、テレビドラマのヒロインは「メガネ女子」のラッシュだ。8月、TBS系「ノーサイド・ゲーム」では主人公(大泉洋さん)のラグビー部再建に、得意の分析能力(アナリスト)を発揮して力を貸す、メガネをかけた美人総務部員(笹本玲奈さん)が登場する。「知的すぎる!誰が演じているの?」と話題になった。そして9月以降、メガネをかけた女性主人公が続々登場している。
綾瀬はるかさんの「義母と娘のブルース」(TBS系)、松雪泰子さんの「ミス・ジコチョー」(NHK)、高畑充希さんの「同期のサクラ」(日本テレビ系)、波瑠さんの「G線上のあなたと私」(TBS系)、本田翼さんの「チート~詐欺師の皆さん、ご注意ください~」(日本テレビ系)といった按配だ。
ヒロインの皆さん、キュートで知的で非常にお美しい!いったい、誰が「メガネは華やかさに欠ける」というのだろうか。
(福田和郎)